OBのAV男優が吐露した筑駒のヤバさ
小林:筑駒のような偏差値の高い学校には、小学校時代、クラスや学年でトップだった子どもたちが入学します。小学校時代に、生徒会長やクラス委員を経験している子がほとんどだと思います。したがって、リーダー経験があり、またリーダーの素質のある生徒が多いのが現実です。
ただ、筑駒の場合は校風が校風です。「自由闊達」を掲げていますので、自分の好きなことを勝手にやろうという生徒が多いのが特徴です。もちろん、自分がリーダーとなって友人を引っ張って何かを成し遂げようという生徒もいますが、少数派です。
──となると、「リーダー養成」という筑駒のビジョンと現実には、乖離が生じてしまっているということでしょうか。
小林:筑駒のホームページには、「挑戦」「創造」「貢献」の3つが掲げられています。また、教育方針の説明には、もちろん「リーダーシップ」という言葉も書かれています。でも、それよりも「互いの尊重」「他者を大切に思う心」などに重点が置かれているように感じられます。
筑駒のリーダー像は、おそらく、今、流行しているアントレプレナーシップのようなものではありません。挑戦する精神力、創造する行動力、そしてその結果を社会に役立て、社会に貢献することを生徒に期待しています。それに加え、目配りができ、人望を得られるような人物こそが、筑駒のリーダー像なのではないかと私は感じています。
──今回の書籍「筑駒の研究」の執筆にあたり、約100人の筑駒OB及び在校生に取材をしたと聞きました。「頭がいい」「勉強ができる」以外に、筑駒OB、在校生の特徴として印象に残っていることはありますか。
小林:筑駒OBも在校生も、とても無邪気です。自分の頭の良さを基準に「勉強なんかしなくても、MARCHレベルの大学なんて簡単に入れるよね」なんて言う人もいました。一般の人からしてみたら、少しムカつきますよね(笑)。でも、頭が良い、人が良いから、何となく許されてしまう。それが、筑駒生の不思議な魅力だと思います。
ただ、筑駒の「ヤバさ」を客観的に理解している卒業生もいます。AV男優の森林原人さんは、筑駒生は、思春期に女性がいないホモソーシャルな環境で過ごすため、男尊女卑的な感覚を無意識のうちに育んでしまっていると指摘しています。
さらに、「頭の良さ」と「オタク性の追求」が暴走すると、相手をムカつかせたり、誤解されることもある。森林さんは、そういった筑駒のヤバさを一番理解している卒業生なんじゃないかなと思っています。
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関 瑶子(せき・ようこ)
早稲田大学大学院創造理工学研究科修士課程修了。素材メーカーの研究開発部門・営業企画部門、市場調査会社、外資系コンサルティング会社を経て独立。You Tubeチャンネル「著者が語る」の運営に参画中。