美里さんが「離島留学」をした際に撮影した写真

 若手社員はなぜ会社を辞めるのか? 入社して数年で、あるいは30代前後で転職を経験した人たちを、元新聞記者のライター、韓光勲氏が紹介する連載「若手が会社を辞めるとき」。「若手社員が辞める理由」と「辞めた若手社員はどこへ行ったのか」を明らかにしていく。(JBpress)

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(韓光勲:ライター、社会学研究者)

 本人は望んでいないのに、人生の選択において「貧乏くじ」をいつも引いてしまう人がいる。筆者の友人の女性、美里さん(仮名、27)だ。大学院ではハラスメントに遭って退学し、最初に働いたマッサージ店では横暴なオーナーに苦しめられて退職した。

 そんな彼女が島根県の離島で3カ月間の「留学」をして帰ってきた。久しぶりに会うと、顔は健康的に日焼けし、表情はさっぱりと明るくなっていた。今回は、キャリアの転機にいる美里さんに話を聞いてみた。

指導教員から受けた露骨なセクハラ

 美里さんは大阪市の出身。母親が在日コリアンで、日本人の父親を持つ。本人は日本国籍だ。実家が筆者の家の近所で、似た境遇にある友人の一人として相談に乗ってきた。

 大学は関西の国公立大学を卒業。卒業論文は学部の賞を受けるなど、高く評価された。研究を続けようと大学院修士課程に進んだ。

 大学院の1年目は順調だった。当時新聞記者だった筆者と出会ったのもこの頃である。大学院のコースワークを頑張り、研究に奮闘していた。

 雲行きが怪しくなったのは、修士課程2年生になったころだ。指導教員のA教授(50代男性)は「お茶会」と称して、美里さんや他の女子学生を自らの研究室に集めた。研究とは関係のないどうでもいい自慢話ばかりを聞かされた。A教授からはLINEのアカウントを教えるよう求められ、不必要なメッセージばかりが送られてきた。深夜に送ってくる日もあった。