福井県議会本会議で辞職が同意され、一礼して議場を出る杉本達治前知事(2025年12月、写真:共同通信社)
(川上 敬太郎:ワークスタイル研究家)
新年に次々と発覚した「見て見ぬふり」の代償
新年早々、腹立たしさを感じるニュースが相次いで飛び込んできました。ひとつは、中部電力・浜岡原子力発電所の再稼働をめぐるデータ不正。もうひとつは、福井県前知事の杉本達治氏が辞任するきっかけとなったセクシュアルハラスメントの調査報告書の公開です。
浜岡原発のデータ不正に対しては、原子力規制委員会から「審査データのねつ造」「審査に要した国費を無駄にするような行為」などと厳しい声が飛んでいます。
中部電力が浜岡原発の耐震設計に関わるデータを不正に操作した問題を巡り、対応を議論する原子力規制委の会合(2026年1月7日、写真:共同通信社)
福井県前知事のセクハラについては、報告書に書かれている内容の破廉恥さに驚かされます。
一方で報告書には、年配の女性職員から「昔はもっとひどいセクハラがあったけれど、自分たちは耐えてきた、乗り越えてきた」という声が聞かれたことなど、周囲の中には大したことではないと見る向きがあったことも記載されています。
職場では、ともすると波風を立てず、空気を読み、問題を問題として扱わないことが、大人としての振る舞いだと教えられたりします。そんな「大人の事情」をくみ取る姿勢は、職場での望ましい流儀としてこれからも後世に受け継がれていくのでしょうか。
過去を振り返れば、ビッグモーターと損害保険会社による不正請求、自動車メーカーによるデータ改ざん、さらには佐賀県警で発覚したDNA鑑定をめぐる前代未聞の不正など、職場で起きる不当行為は、枚挙にいとまがありません。
セクシュアルハラスメントについても、エネルギー関連の会社で社長や会長が相次いで解任されたり、地方テレビ局で会長が辞任したばかりです。業界や組織の種類を問わず、同じような問題が繰り返されてきています。
浜岡原発や福井県前知事の一件に共通する、特に残念に感じる点は、内部通報する人がいたにもかかわらずその時点では報われず、外部から指摘されるまで顕在化しなかったことです。
共に働いている人たちは、皆それぞれの分野で専門性を持ったプロフェッショナルだと思います。何が許されない取り組みで何が不当行為なのかは、本来分かっているはずです。
それでも問題が放置されてしまう背景には、個人の良心だけでは抗えない職場の力学が働いているように思います。