不機嫌ハラスメント、加害者側にどの程度認識があるか(写真はイメージ、maroke/Shutterstock.com)
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川上 敬太郎:ワークスタイル研究家)

気分次第で誰もが加害者にも被害者にもなり得る

 近ごろ耳にすることが増えた言葉に、不機嫌ハラスメント、通称フキハラがあります。不機嫌な口調や態度などを示すことで周囲を不快にさせる行為を指す言葉ですが、「いつもニコニコしてなければならないのか」「何でもかんでもハラスメント扱いするな」といった反発の声も聞こえてきます。

 不機嫌な人がいることで、場の空気が重くなる感じはきっと誰もが一度ならず経験したことがあるでしょう。わざわざハラスメント扱いしなくとも、不機嫌さがもたらす弊害は多くの人が肌感覚で理解していると思います。

 そのためか、「ただの不機嫌」「気にしなければいい」などと一蹴し、フキハラを問題視しようとしない向きもあります。また、“不機嫌”という文字がすでにネガティブな意味合いを持っているだけに、“ハラスメント”という言葉をつなげると意味が重複しているような気もします。

 では、フキハラとは話題作りのために不機嫌なだけの状態を大げさに切り取った雇用系バズワードに過ぎず、あえてハラスメント認定してまで対策を考えるような問題ではないのでしょうか。

 いま職場には、○○ハラスメントが溢れかえっています。セクシュアル・ハラスメント(セクハラ)やパワー・ハラスメント(パワハラ)、カスタマー・ハラスメント(カスハラ)などはすでに社会に定着し、問題意識も広く共有されています。

 一方、何でもハラスメント扱いする姿勢を嫌がらせの一種だと捉える、ハラスメント・ハラスメント(ハラハラ)なる言葉もあります。こうなってくると言葉遊びのようですが、フキハラを同じ系列の言葉だと感じている人も少なくないかもしれません。

 ただ、フキハラには他のハラスメントと様相が異なる点があります。加害が生じる場面に、これといった特徴がないことです。セクハラであれば性的な意味合いが含まれる言動に限られますし、パワハラなら力関係の上下が前提となるといった特徴があります。

 ところが、フキハラは加害者の気分次第でいついかなる場面でも発生しますし、加害者が上司だとも限りません。気難しい部下の言動に上司が気を使い、腫れ物のように接して被害者になってしまうこともあります。つまりフキハラの場合、いつでもどこでも誰もが、気分次第で被害者にも加害者にもなり得るということです。