(川上 敬太郎:ワークスタイル研究家)
全国各地でひっきりなしに報道されるパワハラ事件
「業務態度に十分じゃなかった面があると思う」「生まれ変わって役割を果たす」──。パワーハラスメント(パワハラ)疑惑を告発された兵庫県の齋藤元彦知事は、パワハラの事実はないと否定した上で反省の弁を述べました。
パワハラに関する報道は全国各地でひっきりなしです。この1カ月ほどだけ眺めても、ざっと以下のようなタイトルが並びます。
・後輩の30代女性職員に「なぜ遅い」「聞いてないぞ」声を荒らげ…以前から“熱くなりやすい”と指摘の63歳男性職員「謝罪の気持ちしかない」(TBS)
・本人釈明「パワハラと思っていない」ごみ処理場で威圧「俺が市議と知らないのか」議会も厳重注意(北海道テレビ)
・パワハラ行為で医学部の50代教授を懲戒処分 業務量制限すべきとの診断配慮せず部下に業務強要(テレビユー福島)
・工場長から「おまえガンやぞ」 パワハラと認めて労災不認定取り消す(朝日新聞)
・防衛省、パワハラで「背広組」複数幹部を懲戒処分へ…部下に対し威圧的な言動か(読売新聞)
・熊本大学職員がパワハラか 広告会社が契約解除を申し出(NHK)
・フェンシング部の男子部員自殺はパワハラ原因と遺族提訴(産経新聞)
・福岡のこども病院でまた…パワハラで職員処分 日常的に「殺すぞ」(毎日新聞)
・部下に対し「お前は使えない」 51歳の男性消防司令がパワハラ行為をしたとして減給処分(秋田朝日放送)
・「面前パワハラで被害」柔連女性 適応障害、全柔連に訴え(東京新聞)
パワハラが良くないことだという認識は、すでに世の中に十分広がっているはずですが、一向になくなる気配がありません。どれだけ問題視されても、なぜパワハラは再生産され続けるのでしょうか。
メディアが報じた事例は、氷山の一角に過ぎません。世の中に知られていないパワハラが数多く存在していることは容易に想像できます。2022年にはパワハラ防止法が全面施行され職場のパワハラ防止措置が義務化されたのは大きな一歩ですが、それだけでなくなるわけではなさそうです。
むしろ、数々の報道や法施行などを機に人々の意識が高まったことで、パワハラは減るというよりも、これまで被害者が泣き寝入りを余儀なくされてきた案件が表面化するようになってきた面もあるかもしれません。
また、以前当サイトで書いた記事(パワハラ防止法が全面施行されたのにパワハラ被害が一向になくならない理由/2022年9月26日公開)でも指摘したように、パワハラ加害者の中には無自覚な者がいます。そうすると自制が利かず、どうしても発生してしまう余地が残ります。