
(堀内 勉:多摩大学大学院教授 多摩大学サステナビリティ経営研究所所長)
資本主義の発展はフロンティア開拓の歴史
今年の元日に放送されたNHK BSスペシャル『欲望の資本主義 2025 成長神話の虚実』では、「資本主義の無限の成長は可能か」がテーマでした。
この中で、哲学者のマルクス・ガブリエル、経営コンサルタントの名和高司、経営者のデービッド・アトキンソンの3氏が、無限の成長の可能性について語っています。
3氏とも無限の成長は可能とする一方で、ガブリエルと名和が質的な成長を新たな「成長」と捉えて、そこにまだ伸びしろがあるとしたのに対して、アトキンソンが日本企業は知恵と工夫により、もっと商品価格を上げていくことが可能だと主張しました。つまり、日本について言えば、量的な成長はまだまだ可能だということです。
資本主義の起点をどこに取るかは様々な説がありますが、オーソドックスに大航海時代とそれに続く産業革命をそのスタートと考えると、資本主義の発展はフロンティア開拓の歴史ということができます。
つまり、植民地という地理的なフロンティア、金融を使った将来価値の取り込みというフロンティア、都市という新しい空間のフロンティア、ITというバーチャル空間のフロンティア・・・こうした無限のフロンティアを内側に取り込みながら、資本主義は絶え間ない成長を続けてきました。そして今や、月や火星をも視野に入れた宇宙空間さえも、取り込むべきターゲットとされています。
現代に生きる私たちは資本主義の申し子です。資本主義という経済システムがデフォルトの社会に生を受け、かつてその外にあったのは、ソ連や中国などの共産主義国家や北朝鮮のような独裁国家だけでした。それがソ連の崩壊と中国の改革開放政策によって、20世紀末には、資本主義が全地球を覆い尽くすことになったのです。