自民党の両院議員総会で、衆院選の公約を手にあいさつする高市早苗首相=2026年2月18日(写真:共同通信社)
選挙が終わりました。いわゆる「(支持率)高いうち解散」ということで、解散することについては、年明けすぐにでもやるのではないかと予想して、多くの識者がもう少し後だと唱える中、珍しく当てましたが、まさかここまで勝つとは思っていませんでした。単独過半数に届くかどうか、ということで「中勝ち」を予想していましたが、自民党の「大勝ち」・圧勝ぶりは私の想像をはるかに超えていました。300議席超えの勝利は圧巻でした。
ここまでの勝利は予想外ではありましたが、衆議院において自民党単独で3分の2議席を超える「超安定政権」の誕生は、日本の今後や世界との関係を考えると、非常に良かったのではないかと感じています。冷めた目で見れば、実は、誰が政権の舵取りをしても、極端に大きな政策の違いは出せないわけであり、そうであるならば、特に国際情勢を考えると安定政権に越したことはないからです。今回は、この選挙結果を受けて私が感じたこと、そしてこれからの日本にとって本当に必要なことは何か、というテーマについて述べてみたいと思います。
なぜ解散したのか?安定政権が生まれた外交上の意義
まず、そもそも高市早苗首相はなぜこのタイミングで解散に踏み切ったのでしょうか。支持率が高いうちに、ということで冒頭にも述べた通り、総理の名前を掛けて「高いうち解散」と言われていますが、確かにその側面は強いでしょう。しかし、その背景には2つの大きな理由・政権にとっての危機感があったと私は考えています。
ひとつは、予算委員会の運営です。首相は、野党が委員長ポストを握る予算委員会の運営に不満を持っていたと聞いています。野党が予算委員長を務めるということで注目された安住淳氏の運営は、意外に中立的で与党にも好評だったと聞いていますが、特に高市政権になってからの枝野幸男委員長の運営に思うところがあったようで、この重要なポストを与党側で取り返したいという思惑があったように思います。
そして、もうひとつがより本質的で大きな理由なのですが、それは、中国をはじめとする世界各国としっかり交渉・対峙できる体制・基盤を政治的に作りたい、という強い意志です。解散の理由を述べた高市総理の演説でも、実はこの点に触れていますが、解散の大きな理由としてはあまり注目されませんでした。が、特に対中外交などに関して、この理由は非常に大きかったものと思います。
高市政権発足早々に、岡田克也議員の執拗な質問によって引き出された高市首相の台湾有事に関する発言が物議を醸し、中国が猛反発したことは記憶に新しいところです。高市首相は中国からの撤回要求にも応じず強硬な姿勢を貫きましたが、その後、野田佳彦議員からのほぼ同様の質問に対しては岡田氏の時のような踏み込んだ答弁を避けました。このことは、岡田氏の質問に対する答弁を事実上、撤回したものと見なされました。
これは、多くの関係者が「出来レース」だとみなしており、私もそのように感じるわけですが、つまり、総理大臣経験者で国益を大所高所から考えられ、しかも高市総理と同じ松下政経塾出身だという野田氏が首相に助け舟を出すような形になったわけです。これによって事態が収束に向かえばいいと、首相も野田氏も考えていたと思います。ところが中国は収まりませんでした。
この一件から、習近平主席が「うん」と言わない限り、問題は解決しないのだという現実が浮き彫りになりました。日本の総選挙後の2月14日、中国の王毅外相がミュンヘン安全保障会議の場で激しく日本の台湾に対する姿勢を批判したのも、習近平主席の日本に対する怒りのメッセージと捉えられます。
このような状況で有効なのは、かつての安倍政権が取った手法です。同じように右寄りの政治家として習氏が快く思っていなかったとされる安倍氏ですが、長期安定政権を築く中で、中国としても付き合わざるをえませんでした。つまり、国内で盤石な支持基盤を固め、相手に「この政権と付き合わざるを得ない」と思わせる状況を作り出すこと。今回の選挙での大勝利は、まさにその狙い通りの結果であり、望み以上の成果だったと言えます。日本と普通に付き合うには、高市政権と交渉するしかない、と思わせる効果です。
特に、4月に予定されている米中首脳会談を前に、この体制を築けたことは極めて重要です。歴史的に日本は、アメリカが中国と直接手を結ぶ「ニクソン・ショック」のような事態を恐れてきました。特にアジア太平洋などの世界の安定や同盟の価値以上にディールを好むトランプ大統領にとっては、台湾も日本もある意味でアメリカの国益のための「カード」に過ぎないとも思われ、盤石な体制を築いた習近平主席がアメリカに物凄い「お土産」を持たせて、わが国の国益にならないことを米中両国で日本の頭越しに物事を決めてしまう「日本飛ばし」への懸念がつねにあるわけです。