2026年2月に開催された合同説明会(写真:共同通信社)
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 就職活動シーズンに突入した。毎年この時期になると「新卒一括採用」を批判するコメントがあちこちに見られる。画一的な採用方法や学業の阻害などは以前から問題視されてきた。しかし、学生の就活に長年携わってきた専門家は、新卒一括採用悪玉論こそ現実に即していないと語る。『日本の就活 新卒一括採用は「悪」なのか』(岩波文庫)を上梓した常見陽平氏に聞いた。(聞き手、池松 聡、ビデオジャーナリスト)

──今回なぜ就職活動を焦点に本をお書きになったのでしょうか?

常見陽平氏(以下、常見):30年前は就活生、20年前は民間企業の人事採用担当、10年前からは大学の専任教員と、私はこれまで10年刻みでさまざまな立場から就活に関わってきました。このような経験から、毎年就活シーズンになると言われる「就活一括採用は悪である」という意見に反論しておきたいと思っています。

 新卒一括採用は、当事者である学生、大学の教員、財界、政治家などあらゆる立場の人から批判されてきました。ただ、批判の中には実態を正確に捉えていないものもあります。加えて、「これさえ叩けば社会が良くなる」といった言説はどこかポピュリズムにも似たものがあり、多くの人が正しくデータやファクトを見ずに同意することに危機感を覚えていました。

──あらためて新卒一括採用とは何でしょうか。また、どのような層から、どのような理由で批判されてきたのでしょうか。

常見:新卒一括採用とは、定期的かつ計画的に未経験の学生を在学中に選抜し、採用する慣行のことを指します。学生が在学中に一斉に就職活動を始め、それに合わせて多くの企業が大量の新卒学生を採用します。

 新卒一括採用に対する批判はあちこちに見られ、東京大学総長である藤井輝夫氏や脳科学者の茂木健一郎氏は「新卒一括採用は多様性を阻害する」と批判しています。また、経営学者の楠木健氏は「高度経済成長期に機能した制度が惰性で続いている」と述べています。

「新卒一括採用が原因でイノベーションが起きない」「社会の多様性がなくなる」といった拡大解釈された批判コメントさえ巷には見られます。

──常見さんは本書を通して、新卒一括採用には良い効果や一定の合理性があったと主張されています。

常見:新卒一括採用は学校から職業への間断なき移行を実現する手段として、企業や社会が労働力を確保する手段として合理的です。仮にやめると、極論ですが毎年約45万人の若者が無職のまま社会に放り出されます。

 奨学金やアルバイトに依存している学生が、経済的に自立できないまま社会に出ればフリーターとして固定化する恐れがあり、社会への労働力の供給も不安定になります。「卒業後に就活をすればいい」などと考えるのは牧歌的で、経済的に困窮している学生がサポートなしに就活をするのは簡単ではありません。