無住になり不活動法人化した寺院(島根県)
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(鵜飼秀徳:僧侶・ジャーナリスト)

 全国に約18万ある宗教法人のうち、活動実態のない「不活動宗教法人」が5000法人以上に上ることが明らかになった。その多くが寺院や神社などの伝統宗教とみられている。背景にあるのは、地域の人口減少や後継者不足などの構造的問題だ。

 不活動宗教法人は、売買やマネーロンダリングの対象になったり、外国資本に買われたりする危険性がある。すでに寺社のM&Aを手掛けるブローカーが複数存在する。こうした事態に、文化庁は2025年度の補正予算に「宗教法人格の不正利用対策のための実態把握事業」を盛り込み、対策に乗り出した。

「宗教法人の非課税措置を活用して、資産の維持コストを大幅に削減できます。当社では、これらの特典を最大限に活かした資産の有効活用をご提案します」──。

 宗教法人の売買を手掛けるブローカーのホームページを見ると、このような文言が踊る。取引実績として全国の寺や神社の写真が掲載されている。「中部地方の歴史あるお寺を譲ります」などと称して、約770坪の土地を有する宗教法人を1億2800万円で売却しようとしているものなど、枚挙に暇がない。

 販売価格は条件によって異なるが、数百万円から数億円にも上る。本堂などの建造物や檀家をもたないペーパー法人のほうが、利便性があって人気だという。要は活動実態を伴わないペーパー上の法人役員となって、法人印と銀行口座さえ手中に収めれば、やりたい放題というわけだ。宗教法人に与えられている法人税や固定資産税などの非課税措置を利用しようと企む勢力が、存在するのだ。

無人の神社も知らぬ間に売買の対象になり得る(長崎県)

 ブローカーは先述のように「非課税措置の活用」を謳いつつも、一方では「節税・脱税目的の取引はお断り」「信仰をもたない方や営利での譲渡は行なっておりません」などとも記し、あくまでも合法的な取り引きを実施していることを強調している。だが、宗教法人のM&Aを手掛けるブローカーは、所在地などの法人概要を明らかにしないなど、不透明な点が多い。

 筆者の肌感覚ではあるが、こうしたブローカーがこの1、2年で急増している。政府は、ネット上の仲介サイトを通じた取り引きは、宗教法人を悪用した違法取引を助長している恐れがあるとして警戒を強め、対策に乗り出している。