トヨタ自動車のBEV「bZ4X」(写真:共同通信社)
(井元 康一郎:自動車ジャーナリスト)
トヨタ異例のトップ人事、研究開発から「財務のプロ」へかじを切った新体制の狙い
2月6日、トヨタ自動車はトップ人事を発表した。現社長の佐藤恒治氏が副会長に、執行役員の近健太氏が新社長に、“実質CEO”の豊田章男会長はそのまま留任という布陣で、4月に新体制発足となる。
研究開発畑の佐藤氏は就任丸3年をもっての交代。トヨタでは、病気で退任した豊田達郎社長を除けば最短の任期である。
佐藤氏は昨年、日本経済団体連合会(経団連)の副会長に就任。今年1月1日からは日本自動車工業会会長も務める。両ポストとも業務量は膨大で、それを2つもこなしながら社長業もこなすのは負担が大きいことから、早晩退任するという見方は昨年からあった。
とはいえ、6月の株主総会後に取締役からも退任する予定というのは、社長経験者としては豊田章男氏の前任で、リーマンショックによる経営危機の責任を取らされる格好となった渡辺捷昭氏の例がある程度ということを考えると、いささか冷遇にも映る。
一方、新社長となる近氏は会社の財布をコントロールする財務・経理畑。また豊田章男氏の秘書を8年間務め、豊田章男氏の長男、大輔氏が上級副社長を務めるウーブン・バイ・トヨタではCFO(最高財務責任者)として後見に回るといった経歴から、創業家の覚えがめでたいことは間違いないだろう。
トヨタ自動車の社長交代会見。写真右から近健太次期社長、佐藤恒治社長(2026年2月6日、写真:日刊工業新聞/共同通信イメージズ)
トヨタは2020年のコロナショック後、世界の自動車業界において非常に早い立ち直りを見せ、2025年まで6年連続で世界販売首位を達成するなど、ビジネスは順風満帆だ。
南北アメリカ、ヨーロッパ、オセアニア、東南アジア、中国、中近東、アフリカと、市場によって短期的な増減はありながらもグローバルでみれば穴が少ない。商品であるクルマはコンベンショナルなエンジン車とハイブリッドカーという2つのマスカテゴリーをガッチリ押さえている。故障率調査や耐久性評価では常にトップクラスでリセールバリューも高い。
その根底にあるのは、1990年代に奥田碩元社長が方針を示し、以後一貫して続けてきた技術の“全方位戦略”だ。