トランプ政権の「脱BEV」は追い風か逆風か、近新社長に求められる「勝負勘」
トヨタの全方位戦略を完成させるための重要なピースというBEVの位置づけ自体は、おそらく新政権になっても変わることはないだろう。
近氏は財務・経理畑であるだけにコストコントロールに関して相当厳格な改革を行うとみられるが、現時点で収益を圧迫する要因になるからといって、全方位戦略からBEVを外すという判断を勝手に下せるわけではない。
ただ、電動化技術の研究開発とは別のレイヤーであるBEVの商品戦略について、佐藤氏と同様の熱量で取り組むかどうかについては未知数だ。
トランプ大統領がパリ協定離脱、BEVへの優遇措置廃止、さらにはエンジン車の排出ガス規制緩和と、民主党時代のグリーンニューディール(環境技術を経済成長の柱にする政策)に完全に逆行する策を続々と打ったことで、トヨタの最大の得意先であるアメリカ市場におけるBEVの販売は混乱をきわめている。昨年、第4四半期(10─12月)のBEV販売台数は前年同期に比べて30%以上減少し、そのトレンドは1月も続いている。
欧州ではBEVの販売が好調に推移しているが、これは手厚い公的なインセンティブが需要を後押ししているという感が強く、BEVマーケットが自律的に成長を続けるような段階にはまだない。
BEVの最大市場である中国では地場企業が優勢である上、トヨタも他社との共同開発によるモデルが好調で、自社のオリジナリティが十分に発揮できている状況にない。
すでに昨年の段階でトヨタは2026年のBEVのグローバル販売目標を150万台から100万台以下へと下方修正している。年間1000万台以上を売るトヨタにとっては1割以下のビジネスとなる。将来技術として必要であることに変わりはなくとも、ビジネスの優先度としては後回しにされやすい状況が生まれている。
豊田章男氏の長男、豊田大輔氏はまだ37歳で、創業家への“大政奉還”にはまだ時間が必要。そこまでのセットアッパーとして、近氏にトヨタの上昇機運をスポイルするような判断ミスは許されない。
世界の情勢がどう変化するかによって需要が大きく変動し、この先もいつ、どういうブレイクスルー技術が登場するかが不透明なBEVはトヨタといえども先が非常に読みづらい商品である。それをどうさばくのか、高い勝負勘があらためて求められるところだ。




