エモーショナルでスポーティな雰囲気を醸し出すクラウンスポーツPHEV(写真:筆者撮影)
新しいクラウンの形である「クラウンスポーツ」。クラウンがSUV化したことに驚いた人も多いだろう。初お披露目からすでに4年近い歳月が流れ、町中や高速道路でクラウンスポーツを見かけることが増えた。そうした中、筆者はクラウンスポーツPHEV(プラグインハイブリッド車)を長距離でしっかり試乗した経験がないことに気がついた。これまではHEV(ハイブリッド車)しか長距離試乗をしていない。
2月上旬、輸入車の各種電動車の試乗会に出向く用事があり、このタイミングでクラウンスポーツPHEVに触れてみようと考えた。クラウンスポーツでHEVとPHEVの走りはどう違うのか。また、他のクラウン4車系の中で、クラウンスポーツの存在意義とは何なのか。クラウンスポーツPHEVで走りながら改めて考えた。
(桃田 健史:自動車ジャーナリスト)
まず、現行クラウン4車系について触れておきたい。
トヨタ自動車は2022年7月15日、新型クラウンのワールド・プレミア(世界初公開)を開催した。当時、発表会場の報道陣やオンラインで視聴した一般ユーザーは、このクラウンの変貌ぶりに度肝を抜かれた。
なぜなら、トヨタはクラウンブランドで、「クロスオーバー」「セダン」「スポーツ」「エステート」という4つの車系を取りそろえたからだ。
2021年頃から、一部のメディアは「次期クラウンはSUVになる」と報じていた。しかしSUVを含めた4車系になるとは予測していなかった。
ただし、トヨタは4車系投入という商品計画を“奇策”であるとは思っていない。
クラウンが続けてきた革新と挑戦
クラウンの歴史を紐解けば、その答えはおのずと分かる。歴代クラウンを世に送り出した主査(開発責任者)のクラウンに対する思いは常に「革新と挑戦」であったからだ。基本的にクラウンはクルマの形や駆動方式にとらわれることもなかった。
高度成長期に「いつかはクラウン」と称されたトヨタのフラッグシップのあり方は、1989年登場の「セルシオ」(レクサスLS)によって大きく変わった。
その後、2000年代の「ゼロクラウン」、リーマンショック前後での「リボーンクラウン」、さらに通信に関する技術革新が進んだ「コネクテッドクラウン」と、時代変化に対してトヨタが戦いながらクラウンの未来を切り開いてきた。
そして迎えた16代目は当初、15代目のマイナーチェンジを計画していたが、トヨタは思い切った決断を下す。クラウンの固定観念にとらわれず、トヨタの「決意と覚悟」を具現化し4車系とした。
さらに、これまではほぼ国内向けだった商品価値を、40以上の国と地域に向けたグローバル車として再定義。クラウンというブランドを、大変革してみせたのだ。
新型クラウン発表時点で、当時のトヨタミッドサイズカンパニープレジデント(現・代表取締役副社長)の中嶋裕樹氏は「クロスオーバーでGOがかかり、セダンを再検討。さらに多様性の時代を考慮してハッチバックやワゴンを提案した」と、4車系誕生の経緯を説明した。
その後、筆者が新型クラウンの主査やデザイナーと意見交換した際には、実は4車系以外にも様々なデザインのアイデアを考案し、量産化の可能性を社内で議論したことを明らかにしている。将来的には、初期設定の4車系以外の車系がクラウンブランドで登場する可能性も否定していない。
では、試乗に移ろう。