係員が手動で牽引する「空飛ぶクルマ」のSKYDRIVE「SD-05」。実証試験の現場を取材した(写真:筆者撮影)
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大阪・関西万博で大きな話題となった未来のモビリティ「空飛ぶクルマ」。ただし、当初予定していた一般来場者向けの遊覧飛行は行われなかった。加えて参加企業数が減少したり、使用する機器が変更されたりするなど、「空飛ぶクルマ」の社会実装への道のりはまだ遠いという印象を持った人も多いだろう。そうした中、東京でも「空飛ぶクルマ」実用化に向けた実証試験が始まった。現場を取材し、日本における「空飛ぶクルマ」の現在地とこれからの可能性を考えた。

(桃田 健史:自動車ジャーナリスト)

 最初に、「空飛ぶクルマ」という表現について触れておく。なぜなら、各報道で出てくるこの表現に対して違和感を持つ人が多いからだ。

「空飛ぶクルマ」とは技術的には、複数の電動ローターで駆動する垂直離着陸機器(eVTOL:Electric Vertical Takeoff and Landing Aircraft) であり、人によっては「大きなドローン」とか「電動ヘリコプター」という飛行機の仲間というイメージが先に立つ飛行体だ。

 また「空飛ぶクルマ」のほとんどは陸上では自走しないため、この点でも「クルマの仲間ではない」と考える人もいるだろう。

 それでも、国(国土交通省)が2018年度に立ち上げた「空の移動革命に向けた官民協議会」は、日本の大企業からベンチャーまで横断的に連携し、まるで地上で走るクルマのように空を手軽に移動できる社会のあり方の検討を前提に動いている。そして今も、あえて「クルマが空を飛ぶ」ことをイメージした名称を使い続けている。

 見方を変えると、クルマのように、空を誰もが手軽に移動できないのであれば、「空飛ぶクルマ」の存在意義はなくなってしまうわけだ。

「空飛ぶクルマ」の実証試験

 そうした中、今回の実証は「空の移動革命実現に向けた東京都官民協議会」での議論を踏まえた「東京都 空飛ぶクルマ実装プロジェクト」の一環となる。

 同プロジェクトの社会実装に向けたロードマップによれば、2020年代後半を立ち上げ期として、2025年度から2027年度までを「プレ社会実装」と位置付けた官民共同事業とした。三菱地所がプロジェクトを取りまとめ、大手商社の兼松とスタートアップのSKYDRIVEが加わる形だ。

 2028年度から2029年度は、都が事業を支援しながら一部市街地での商用運航を開始する計画だ。

 本格運用は2030年度以降となり、「空飛ぶクルマ」関連事業が独り立ちして商用運航が拡大することを狙っている。

 では、話を今回の実証試験の現場に移そう。

記者団の質問に答える実証実験の参加者ら(写真:筆者撮影)