ウクライナ・スムイ県にある第71独立空挺旅団の訓練キャンプの塹壕で突撃演習を行うウクライナ軍兵士(写真:Francisco Richart/ZUMA Press Wire/共同通信イメージズ)
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[ロンドン発]5年目に入ったウクライナ戦争における戦場の変化について、英国の安全保障シンクタンク、王立防衛安全保障研究所(RUSI)のマシュー・サヴィル軍事科学担当部長は「かつての戦争では勢力圏を分かつ明確な前線があったが、現在は境界が曖昧になった」という。

明確な「前線」が消え、「接触地帯」に

 同じ消耗戦でも兵士は第一次大戦のように数百メートルから数キロメートルにわたり隣接する長い塹壕ではなく、独立した「歩兵陣地の集積(クラスター)」に潜む。点在する陣地の隙間を縫って敵の背後に回る、側面を突く、特定の拠点を孤立させる動きが絶えず行われている。

 はっきりとした「前線(フロントライン)」ではなく、どちらの勢力も完全に支配していないか、あるいは互いの監視と火力が交錯する不安定な領域が拡大している。「接触地帯(コンタクトゾーン)」または「グレーゾーン」と呼ばれている。

 大規模な突破が起こらない理由は空中ドローン(無人航空機)と監視技術の浸透により戦場が透明化されたことだ。以前なら数キロメートル後方に部隊を集結させて一気に突破を図ることができたが、今は集結した瞬間に空中ドローンに見つかるため奇襲を仕掛けにくくなった。