現在の技術では大規模に人間を代替するには不十分
ロシア軍は赤十字を掲げた車両も標的にするため、従来の救急車両は前線に接近できない。ウクライナ軍が導入したUGVは低視認性と静音性を活かし、最前線から1〜3キロメートル離れた安全な地点まで負傷者を後送した。
昨年4月、ウクライナの防衛技術イノベーションを支援する政府機関「Brave1」が実施したロボット試験に登場した無人陸上車両(写真:Ukrinform/共同通信イメージズ)
敵軍のドローン監視により1カ月以上孤立していた負傷兵3人をUGVが救出したウクライナ軍第110独立機械化旅団などの事例も報告されている。こうしたUGVによる作戦はドローンによる監視網を潜り抜ける「サイレント・レスキュー」として高く評価されている。
前線での兵站任務、負傷者の避難、物資輸送を目的に設計されたVolia-E(写真:Ukrinform/共同通信イメージズ)
単なる運搬手段であったUGVは現在では「武装ロボット」として戦闘に直接関与するようになった。昨年9月に発表された重武装プラットフォーム「VATAG」は2トン以上の積載能力を持ち、25ミリメートル機関砲や対戦車ミサイルを搭載可能だ。
人工知能(AI)による自律航法と目標検知システムが組み込まれており、電子戦(EW)下でも任務を遂行できる。「Ratel-S(カミカゼUGV)」などの小型UGVは、40キログラムの爆薬を搭載して戦車の下や橋脚に潜り込み、自爆攻撃を行える。
ウクライナ政府の軍事技術クラスタ「Brave1」はUGV開発を後押しする。昨年約1万5000台のUGVが納入され、今年の計画は2万台超。通信遮断に対抗するためスターリンクの搭載や光ファイバー制御、複数のドローンで通信を維持するメッシュネットワークの導入が進む。
こちらはロシア軍のUGV。ロシア・ルガンスク人民共和国にあるザパド(西)軍集団第92工兵連隊でシステム改良中のロボット(写真:Sputnik/共同通信イメージズ)
前ウクライナ軍総司令官のヴァレリー・ザルジニー現駐英大使は、ロボットシステムによってすでに前線から人員を削減し、死傷者を減らすことが可能になっているとしつつも、現在の技術では大規模に人間を代替するには不十分だと強調している。
【木村正人(きむら まさと)】
在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争 「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。





