「船の体育館」と愛称で呼ばれる「旧香川県立体育館」。(以下、写真・図版はすべて提供:旧香川県立体育館再生委員会)
(萩原詩子:編集者・ライター)
2026年2月に投票・発表が行われた「みんなの建築大賞2026」は、2025年に完成または公表された国内の建築から推薦委員会が選んだ10作品を対象に、X、Instagram、Googleフォームを通じて投票を募り、その合計票で大賞を決めるものだ。
その記事はこちら。
「みんなの建築大賞2026」、大賞は万博パビリオン「null2(ヌルヌル)」、同じ万博関連「大屋根リング」に競り勝つ
この「みんなの建築大賞2026」で推薦委員会は「旧香川県立体育館再生計画(以下、再生計画)」に「特別賞」を贈った。行政が解体を決めた公共建築を、民間で買い取って改修し、事業化することによって残したい、という提案だ。
大賞発表の記事では計画の内容までは触れられなかったので、ここで改めて紹介したい。「老朽化」「耐震不足」を理由に壊されがちな日本の近現代建築、とりわけ公共建築をどう扱えばいいのか、示唆に富む事例だと考えるからだ。
香川県は「今年度中に解体工事に着手したい」としており、建物の命は風前の灯火だ。しかし「再生計画」をまとめた「旧香川県立体育館再生委員会」は、今も望みを捨てていない。その最新動向についても触れたい。
12年前に閉館、3年前に解体決定
「旧香川県立体育館」は、日本人として初めて「建築界のノーベル賞」プリツカー賞に輝いた建築家・丹下健三が設計し、1964年に完成した。丹下が同時期に設計し、国の重要文化財に指定されている「国立代々木競技場」の「兄弟建築」とも呼ばれる。丹下はまた、同じ香川でこれも重要文化財となった「香川県庁舎東館」(1958年)を手掛けた建築家でもある。
旧香川県立体育館内部。家具デザインは「香川県庁舎東館」と同じく剣持勇が手掛けた。県庁舎では家具も建築の附属物として重要文化財に指定されている
「船の体育館」という愛称で親しまれてきた建物は、今から14年前の2012年「屋根落下の危険あり」としてアリーナ使用が中止された。香川県は3回にわたって耐震改修工事の公告を行ったが応札がなく、2014年9月に閉館に至る。
旧香川県立体育館
それから7年後の2021年、県は改めて民間から活用策を募る「サウンディング型市場調査」を実施。大手企業を含む9事業者から10提案を得た。しかし、企業名も提案内容も非公表のまま「民間事業者が県の財政支援などを受けることなく単独で持続的な運営を行うことは難しい」と結論づけている。その後、2023年2月になって解体の方針を表明した。
「旧香川県立体育館再生委員会(以下、再生委員会)」が立ち上げられたのは、2025年6月。解体決定から2年以上が経っており、香川県側が「今さら」と思っただろうことは想像に難くない。なぜこの時期だったのか。再生委員長を務める地元建築家の長田慶太氏(長田慶太建築要素代表)は言う。
「2014年の耐震改修公告の際に示された改修費用は8億円。これに対し、3億円ぐらいで解体できるのであれば、それも建物の運命かもしれないと考えていた。しかし、2025年