「みんなの建築大賞2026」の大賞に輝いた「null²」(写真:磯達雄)
(萩原詩子:編集者・ライター)
オンライン投票で大賞を決める「みんなの建築大賞2026」。3年目となる今年は「大阪・関西万博」からノミネートされた「null²(ヌルヌル)」と「大屋根リング」の2作品が他の追随を許さず、おのおの大賞と推薦委員会ベスト1に輝いた。
さらに、今年新設された「JINS賞」が「ラビットホール」に、投票とは別枠の「特別賞」が「旧香川県立体育館再生計画」に贈られた。
圧倒的な投票数を誇った万博の2作品
「みんなの建築大賞2026」は、2025年に完成または公表された国内の建築から推薦委員会が選んだ10作品を対象に、X(旧Twitter)、Instagram、Googleフォームを通じて投票を募り、その合計票で大賞を決めるもの。今回の投票期間は2026年2月1日から10日までの10日間で、投票総数は2万8850票だった。そのうち、大賞の「null²」が1万3750票、次点の「大屋根リング」が9281票。この2作品で投票総数の約8割を占め、3位以下を大きく引き離した。
上位5件の得票数。3位の「広島駅南口ビル」、4位の「東海国立大学機構Common Nexus」は、いずれも鉄道駅直結の建築だ。多くの人が利用し、親しんでいることが結果につながったのかもしれない(資料:みんなの建築大賞推薦委員会)
候補作「この建築がすごいベスト10」はこちらを参照されたい。
“推し建築”をSNSで投票しよう!――「みんなの建築大賞2026」候補10作品を一挙紹介
「null²」と「大屋根リング」は、ともに投票が始まった直後から桁違いの票を集めた。しかし、3日目あたりから「null²」が「大屋根リング」を引き離し始め、そのままリードを保ってゴール。勝因は「null²」プロデューサーのメディアアーティスト・落合陽一氏による「投票運動」にあったのかもしれない。同氏は2026年2月16日に東京都文京区の国立近現代建築資料館で開催された大賞発表&授与式に登壇し、その裏話を披露した。
「null²」と「大屋根リング」の投票数推移(資料:みんなの建築大賞推薦委員会)
落合氏「最後くらいリングに勝ちたい」
「null²」は「大阪・関西万博」のシグネチャーパビリオンの1つだ。しかし、延べ面積は655.46m2と小さく、ギネスにも認定された世界最大の木造建築物「大屋根リング」(延べ面積6万6900.02m2)のほぼ100分の1に過ぎない。デッドヒートに競り勝ったのは、文字通りの「ジャイアントキリング」(推薦委員長・五十嵐太郎東北大学教授の評)といえる。
落合氏が受賞スピーチで明かしたところによれば、同氏は「学ぶ、学び舎」で第1回の「みんなの建築大賞2024」を受賞したVUILD代表取締役CEO・秋吉浩気氏の友人なのだという。秋吉氏は当時、熱心に「投票運動」に勤しみ、幅広い支持を集めて大賞を獲得した。落合氏はその様子を見ていたという。
落合氏は投票開始翌日の2月2日に自身のnoteに「最後くらいリングに勝ちたい」と題した記事を投稿。「万博は勝ち負けじゃない」と前置きしつつも、この競争を楽しんでいる様子が伝わってきた。末尾にはしっかり投票のお願いと投票方法が書き込まれており、おそらく多くの「null²」ファン、万博ファン、落合ファンが心動かされたのではないか。
大賞のトロフィーを手にする落合陽一氏(左)と、推薦委員会委員長・五十嵐太郎氏(写真:宮沢洋)