候補作のひとつ、2025年を象徴する建築となった「大屋根リング」(写真:加藤純)
(萩原詩子:編集者・ライター)
今年で3年目を迎える「みんなの建築大賞 2026」の投票が始まった。だれでもオンラインで投票に参加できる建築アワードで、対象は2025年中に完成・開業、または雑誌などで公表された国内の建築から選ばれた10作品だ。投票期間は2026年2月1日から10日までで、X(旧Twitter)、Instagram、Googleフォームの3種類が利用できる。投票方法の詳細は記事末尾で説明する。
候補作「この建築がすごいベスト10」は、建築・インテリア系メディアの編集者や建築史家など約30人で構成する自発的な「推薦委員会」(委員長:五十嵐太郎東北大学教授)が、いわば「勝手に」選んだもの。建築家同士の推薦でも自薦でもない点がポイントだ。「つくり手」ではなく「伝え手」が世間に知ってほしい建築を熱く推すことから、「建築界の“本屋大賞”」と呼ばれることもある。
ベスト10内に順位はなく、一般投票の結果によって大賞を決める。以下、今年はどんなラインナップになったのか、見ていこう。
10作中5作が既存建築の再構築
今年のベスト10の大きな特徴は、半数に及ぶ5作品が既存の建物をなんらかの形で生かしている点だ。その「生かし方」のバリエーションにも注目したい。
建物の種類(用途)では、美術館、動物園をはじめ、公共性が高く、だれでも入れる建築が並ぶ。住宅を含むのは1作品だけで、それも地域に開かれている(詳細は後述)。地域別に見ると、首都圏が4作品(東京2、神奈川1、茨城1)、愛知1、大阪2で、三大都市圏以外は岡山、広島、長崎が1作品ずつとなった。
「大阪・関西万博」から2作が候補に
大阪の2作品は、ともに「大阪・関西万博」のパビリオンだ。その1つはいうまでもなく「大屋根リング」。批判も含めて大きな話題を集め、万博に行かなかった人でも、どんな建築かをなんとなく知っているのでは。2025年を象徴する建築であることは間違いない。
「最大の木造建築物」としてギネス世界記録に認定されたこと、日本の伝統的な木組み技術を活用していることが評価されるが、実際に訪れた人の声を聞くと、会場全体を俯瞰する眺望や、雨よけ・日よけとしての機能、花咲く屋上緑化などが美点に挙げられる。万博は終わったが、大阪府・市は大屋根リングの円周のうち北東部約200mを保存する計画で、周辺の公園・緑地化を検討している。
「⼤屋根リング」上の風景。ダイナミックな眺望の傍らに草花が咲く。設計/藤本壮介、忽那裕樹、東海林弘靖、東畑・梓設計JV、⼤林組、清⽔建設、竹中工務店(写真:⾼⽊伸哉)
「大阪・関西万博」のもう1つは、メディアアーティスト・落合陽一がプロデュースしたシグネチャーパビリオン「null²(ヌルヌル)」。鏡のように周囲を映す、金属(無機)的でありつつ有機的でもある外観が目をひいた。
公式サイトには「自然と人工物、身体と情報空間が融合した『デジタルネイチャー(計算機自然)』」とある。残念ながら筆者は体験していないが、推薦委員もコメントで建築とデジタルの融合を評価している。「null²」はクラウドファンディングで約2.8億円を集め、2027年に横浜で開催される2027年国際園芸博覧会への移設を計画中だ。まだ見ていないあなたも、来年には体験できるかもしれない。
「null²」。万博期間中にも変化を続けたという。設計/落合陽⼀、ノイズ(NOIZ)、フジタ・⼤和リース特定建設⼯事共同企業体、乃村⼯藝社、ワウ(WOW)、アスラテックほか(写真:磯達雄)