『ばけばけ』で松野トキを演じている髙石あかり(写真:Pasya/アフロ)
朝ドラことNHK連続テレビ小説『ばけばけ』が2月16日放送の第96回から熊本編に入っている。松江編は第95回(同13日)で幕を閉じた。物語はもう終盤である。
全体の大テーマも明確になった。「ウソ」である。この作品は初回から一貫してウソを描き続けて来た。ウソとは何かを問い掛けてきた。朝ドラは女性の苦労譚と成功譚が圧倒的に多いから異例だ。
何気ない場面に込められた大きな意味
ウソはレフカダ・ヘブン(トミー・バストウ)のモデルであるラフカディオ・ハーン(小泉八雲)が酷く嫌ったこと。ハーン自身、極めて正直な人だったと妻の小泉セツが回顧録『思ひ出の記』(1927年)に書いている。セツはヒロイン・松野トキ(髙石あかり)のモデルである。
脚本のふじきみつ彦氏は寡作なので、知名度抜群というわけではないが、プロのドラマ制作者の評価が図抜けて高い。人間という複雑な存在の本質を描けるからだ。一方で構成は緻密。何気ない場面に大きな意味を持たせることが出来る。
熊本編の第1週(第96回~100回、同16~20日)もそう。一見すると、ありふれた日常が描かれていただけだが、実際にはこの作品の言わんとすることの多くが詰め込まれていた。まず、いよいよウソというテーマを前面に押し出してきた。作家としてのヘブンが本に書くべき真の題材も明らかにした。
第96回(同16日)、熊本の第五高等中学校に赴任したヘブンは書く題材が何もないと頭を抱えていた。熊本は松江より西洋化が進み、神社仏閣も少ないからだ。これでは日本と西洋の文化の違いを記した『日本滞在記』の続編は書けない。
一方、トキは時間を持て余していた。第95回(2月13日)までの松江の暮らしと違って、クマ(夏目透羽)という女中を雇ったからだ。家事を何一つやらせてくれない。