両親が娘についたウソ、実の父母がついたウソ
この物語は初回(昨年9月29日)からウソを描いていた。まずトキの出自である。トキは元士族の松野家が迎えた養女だが、本人には実子だと伝えていた。トキに疎外感を抱かせたくなかったのが第一の理由だろう。
トキの生みの親は雨清水傳(堤真一)とタエ(北川景子)。トキは2人が遠い親戚だと聞かされていた。雨清水家はやはり元士族だが、松野家よりずっと格が高く、暮らし向きも良かった。これも松野家がトキにウソを吐いた理由であるはずだ。
第2回(同9月30日)、8歳だったトキはフミにこう漏らす。「おじさまのような人が父上なら良かった」。傅である。傅は押し出しが良かったが、司之介は風采が上がらなかった。
トキの言葉にフミは動じなかった。「おじさまはおじさま、父上は父上」と笑った。愛情を十分に注いでいたから、血の繋がった親子より固い結び付きがあると思っていたのだろう。ウソを乗り越えられると信じていた。
司之介がウサギの投機で莫大な借金を背負ったため、トキは10歳だった第4回(昨年10月1日)から働き始める。小学校は司之介に辞めさせられた。勤め先は傅の経営する紡績工場。それでもフミの自信は揺るがない。
第6回(昨年10月6日)、フミは18歳になったトキの婿を探していた。だが、見つからないため、タエを訪ねる。紹介を依頼した。しかし、タエは既にトキの婿捜しを耳にしており、動き始めていた。嬉々として「良き相手を探し始めております」と口にする。
その言葉にフミは静かに反発した。「それならそうと先にお伝えしていただけたら良かったと。あの子の母親としては」。自分しか母親はいないのだと強く自負していた。
もっとも、ウソは大抵、いつかはバレる。このウソもそう。第15回(10月17日)、体を壊したため、三男・三之丞(板垣李光人)に工場を任せていた傅は愕然とする。久しぶりに工場に顔を出したところ、男性従業員が女工を殴っていた。
傅は「なんじゃ、この有り様は!」と激高する。責任者の三之丞を叱り飛ばした。すると三之丞は泣きそうな顔で「私もよそで育ちたかった」と言い出し、トキが雨清水家の実子であることを本人の前でバラしてしまった。三之丞は知っていたのである。
傅は動揺したが、トキは「もう知っちょるけん」と泣きながら言った。誰に聞いたわけでもなく、自然に分かっていたという。ウソに騙されたフリをずっと続けていたのだ。ウソの内容は違えど、誰かを傷つけないために騙されたフリをすることは誰にでもあるだろう。
それでも傅はトキを娘と認めなかった。ウソを続けた。「お前はワシとタエの子じゃない。松野司之介とフミの子じゃ。これからもずっと」。司之介とフミを気遣った。直後に傅は亡くなる。