クマに悪気はない。「高かお給金ばいただいとっとに、お手伝いばさせたら、バチが当たりますけん」。誠実で使命感の強い女性だった。

 一緒に熊本に転居したトキの父親・司之介(岡部たかし)が家の金を無断で持ち出し、小豆投機に手を出したが、幸い儲かった。ヘブンも叱らなかった。長閑(のどか)な日々が続いていた。

焼き網が見当たらなくなり大騒動に

 第98回(同18日)に起きた出来事も些細な話になるはずだった。朝食をつくっていたクマが弱った様子で言った。「パンば焼く、焼き網が見当たらないんです」。ヘブンを始め、住人の朝食はトースト。だからクマは困っていた。

 クマが「誰かに盗られたのでは」と言った。近所の家にも泥棒が入ったからだ。まさか焼き網を盗む泥棒はいないと一同は口を揃えるが、ヘブンの教え子・正木清一(日高由起刀)だけは「盗んだ人がこの中にいる」と言い出す。全員、動機があるからだ。

 7人の住人とは、まず下宿人の正木。ヘブンを慕って松江からついてきた。第五高等中の予科に通っている。錦織丈(杉田雷麟)も同じ。ヘブンの親友で松江中の元英語教師・錦織友一(吉沢亮)の弟だ。ほかに司之介、その妻・フミ(池脇千鶴)、ヘブン、トキ、さらにクマである。

『ばけばけ』でレフカダ・ヘブンを演じているトミー・バストウ(写真:REX/アフロ)

 正木は全員の動機を挙げていった。第99回(同19日)である。正木はトーストの朝食が好きではなかった。焼き網が消えると食べなくて済む。丈はクマと仲が良いので、彼女をトーストを焼く手間から解放しようと思い、焼き網を盗んだとも考えられる。

 司之介もトーストが苦手。ご飯党だ。フミとトキは家事ができないのが不満で、クマに意地悪をした可能性がある。クマはパンを焼く苦労から逃れたかったのかも知れぬ。ヘブンの場合、みんながご飯を食べたいことを知り、わざと焼き網を隠したとも考えられる。

 結論は出なかったが、司之介とフミはお互いを疑い、口論になる。止めに入ったトキまで疑われ、騒ぎは大きくなった。クマは自分のせいだと憔悴する。辞めると言い出す。