「みんなの建築大賞 2024」で大賞を受賞した「学ぶ、学び舎」(設計:VUILD、写真:歌津亮悟)「みんなの建築大賞 2024」で大賞を受賞した「学ぶ、学び舎」(設計:VUILD、写真:歌津亮悟)

(萩原詩子:編集者・ライター)

 一般の人が投票して大賞を決める、新しい建築アワード「みんなの建築大賞 2024」の受賞作が2024年2月15日に発表された。大賞に輝いたのは、東京学芸大学にある実験的な建築「学ぶ、学び舎」(設計:VUILD)。

 また、候補作選考時に最高評価を得た集合住宅「天神町place」(設計:伊藤博之建築設計事務所)が「推薦委員会ベスト1」に選ばれた。

  みんなの建築大賞推薦委員会は同日、東京都文京区の国立近現代建築資料館にて発表会&授与式を開催。受賞2作の設計者が登壇し、自らの作品についてプレゼンテーションしたが、その話が興味深かった。

発表会&授与式の様子。会場となった文化庁国立近現代建築資料館は定期的に企画展示を行っており、無料で鑑賞できる(写真:加藤純)発表会&授与式の様子。会場となった文化庁国立近現代建築資料館は定期的に企画展示を行っており、無料で鑑賞できる(写真:加藤純)

 今回が初めてとなる「みんなの建築大賞」は、2023年に完成または公表された国内の建築から選んだ10作品をXアカウントで紹介し、最多の「いいね」を集めた作品に大賞を贈るというものだ。建築家ではなく、編集者や建築史家などの「建築を伝えるプロ」有志で構成する推薦委員会が候補作を選び、一般の人が投票して大賞を決める点が大きな特徴である。

 候補作「この建築がすごいベスト10」とその選考過程については、以前の記事で紹介した。

だれでも投票できる「みんなの建築大賞」2024、ノミネート10作品を一挙紹介

 その際は伏せたのだが、推薦委員28人中10人が推したのが「天神町place」だった。1年分の膨大な建築の中から1人あたり3作しか選べないことを考えれば、かなり高い注目度といえる。

「推薦委員会ベスト1」に選ばれた「天神町place」(設計:伊藤博之建築設計事務所、写真:歌津亮悟)「推薦委員会ベスト1」に選ばれた「天神町place」(設計:伊藤博之建築設計事務所、写真:歌津亮悟)

 Xでの一般投票は2024年1月29日〜2月11日の2週間にわたって行われた。「天神町place」はここでも多くの票を集めたが、これを激しく追い上げ、最終的に追い越したのが「学ぶ、学び舎」だった。早い段階で「大賞はこのどちらかでほぼ決まりだろう」と予測できたほど、2作は強かった。その要因については、それぞれの設計者が授与式で率直な自己分析を語ってくれたので、あとで紹介する。

 現地を見ておらず、写真と説明での印象ではあるのだが、個人的にはこの賞らしい作品が選ばれたと感じる。