建築系スタートアップVUILDによる大賞受賞作「学ぶ、学び舎」

「学ぶ、学び舎」は、東京学芸大学と、連続起業家・孫泰蔵氏が創業したMistletoeが運営するプロジェクト「Explayground」の拠点施設だ。東京学芸大学は教員を養成する国立大学であり、Explaygroundとは「遊びと学びをシームレスにつなげることで公教育にイノベーションを起こそうとする新たな取り組み」(Explaygroundのnoteより)だという。

内側から見た 「学ぶ、学び舎」。Explaygroundでは「HIVE」とも呼ばれる(写真:市川紘司)内側から見た 「学ぶ、学び舎」。Explaygroundでは「HIVE」とも呼ばれる(写真:市川紘司)

 設計を手掛けたVUILD代表取締役CEOの秋吉浩気氏は、授与式のプレゼンで次のように語った。

「計画通りにつくられた空間からは、創造的な発想は生まれない。関係者との議論の末に、まず屋根だけつくろう、という結論に至りました。その先は、実際に使いながらつくっていく。屋根はそのためのお手本でもあります」。

マイクを手にプレゼンテーションを行う秋吉浩気氏。その後ろに座っているのが「天神町place」を設計した伊藤博之氏。手前から、みんなの建築大賞推薦委員会委員長で東北大学大学院教授の五十嵐太郎氏、文化庁企画調整課長・国立近現代建築資料館館長の寺本恒昌氏(写真:森清)マイクを手にプレゼンテーションを行う秋吉浩気氏。その後ろに座っているのが「天神町place」を設計した伊藤博之氏。手前から、みんなの建築大賞推薦委員会委員長で東北大学大学院教授の五十嵐太郎氏、文化庁企画調整課長・国立近現代建築資料館館長の寺本恒昌氏(写真:森清)

 この建物は、デジタルデータに基づいて3D木材加工機が切り出した、1000以上のパーツで構成されている。パーツの1つ1つは人の手で運ぶことができ、あらかじめ刻まれた番号に従ってプラモデルのように組み立てられる。「これにより、高いコストをかけずに複雑な形の建物を建設できる」と秋吉氏。葉脈状の木の構造物はコンクリートの型枠を兼ねており、コンクリートで覆うことで耐火性も担保できる。

 建物をつくった機械は、建物の中に置かれる。これからこの機械を使って壁をつくったり家具をつくったりと、さらにつくり続けていくことができる。「建物の中でさらに建物が増殖していく」、そう考えると、有機的な形の屋根は、巨大なさなぎのようにも見えてくる。

「学ぶ、学び舎」外観全景(写真:歌津亮悟)「学ぶ、学び舎」外観全景(写真:歌津亮悟)

 Explaygroundは現在、機材の設置工事費や素材となる木を植えるための費用をクラウドファンディングで募っている(2024年4月9日まで)。