東京大学駒場地区キャンパス。東大の学生の8割が男性という点は、この20年間ほとんど変わっていない(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)東京大学駒場地区キャンパス。東大の学生の8割が男性という点は、この20年間ほとんど変わっていない(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)

 意外なことに、日本の最高学府である東京大学(以下、東大)は、学部生の約8割が男性という「男社会」である。かねてより、東大は学部生の女性比率の低さに頭を抱えてきた。キャンパスの多様性を確保するため、2026年度までに学生の女性比率を30%にすることを目標に掲げているが、その実現は容易ではなさそうだ。

 なぜ東大は男性が多いのか、キャンパス内でマイノリティである女性はどのような立場なのか。『なぜ東大は男だらけなのか』(集英社)を上梓した矢口祐人氏(東京大学副学長、同大グローバル教育センター長)に話を聞いた。(聞き手:関瑶子、ライター&ビデオクリエイター)

※本インタビュー記事では、東大と日本社会の持つ特定のジェンダー問題を浮き彫りにするため、二項対立的に「男性」と「女性」という言葉を用いている。また、大学生は成人であるため、「女子」という言葉は避け、あえて「女性」という表現を用いた。

──東大のジェンダーの偏りに気付いたきっかけを教えてください。

矢口祐人氏(以下、矢口):東大は2012年に、英語のみで学位取得を実現する教養学部付属のプログラム「PEAK(Programs in English at Komaba)」を創設しました。

 このプログラムで東大に入学する学生の多くは、日本語がほとんどできない留学生です。私はPEAKの創設に携わり、学部1年生の担任教員のような役割をすることになりました。

 PEAK生からは、勉強のことから慣れない日本での生活のことまで、さまざまな相談を受けました。その中で、女性のPEAK生から受けた、東大のサークルに対する不満が、私の意識を一変させるきっかけとなりました。

 それは、「東大の女性学生だからという理由で、サークル加入を断られた」というものでした。

 私は衝撃を受けました。当時、既に10年以上、東大で教鞭をとっていました。にもかかわらず、そんな話は初耳でした。

 調べてみると、東大には、「東大の男性学生」は参加できるが、「東大の女性学生」はお断り、というサークルが複数あることがわかりました。それはいかがなものか、と思ったのがきっかけでした。

──2024年現在、東大の「女性排除サークル問題」は徐々に改善しつつあると書かれていました。

矢口:時代が変わってきた、ということも大きいと思います。

 私が「女性排除サークル問題」に気付き、周囲の教職員に相談しはじめた当初は、「女性学生には気の毒だが、それを変えるのは難しい」という反応がほとんどでした。

 というのも、日本の大学、特に国立大学では学生の自主性を重んじる文化があります。それも、教育の一環だと捉えているのです。

 学生たち自身が「うちのサークルは他大学の女性だけを受け入れる」と決めたことに、教職員が一方的に干渉することは望ましくありません。サークル加入の可否に関するルールを変更するのであれば、当事者である学生自身が考え、動くべきだ、という声が教職員の大多数を占めていました。