大麻取締法改正で、大麻草由来成分の医療用途での製造・販売が可能になる(写真:MR.Yanukit/shutterstock)大麻取締法改正で、大麻草由来成分の医療用途での製造・販売が可能になる(写真:MR.Yanukit/shutterstock)

 大麻乱用の拡大が止まらない。2013年は1616人だった大麻検挙者数は、わずか10年後の2023年、約4倍の6482人にまで膨れ上がった。その背景として、大麻取締法では大麻の「所持」が罰則の対象となっているものの「使用」には罪が課せられないことなどが挙げられる。

 一方で、大麻草には難病に有効な成分が含まれている。2024年12月12日に施行される大麻取締法の改正法で、現行法では不可能だった大麻草由来成分の医療用途での製造・販売が可能になる。

 どのような疾患に大麻草由来成分が有効なのか、大麻の規制はどのように変化するのか、乱用防止に有効な手立てはあるのか──。舩田正彦氏(湘南医療大学薬学部医療薬学科教授)に話を聞いた。(聞き手:関瑶子、ライター&ビデオクリエイター)

──今回の大麻取締法改正の経緯、目的について教えてください。

舩田正彦氏(以下、舩田):現行の大麻取締法では、大麻草の特定の部位から抽出した成分を医薬品に使用することができません。

 2018年6月に、米食品医薬品局(FDA)は大麻草から抽出した成分を使用した抗てんかん薬・エピディオレックスの製造販売を承認しました。2019年9月には、欧州医薬品庁 (EMA)も同薬を承認しています。

 エピディオレックスは、従来の抗てんかん薬での治療が困難な難治性てんかんに有効な医薬品として期待されています。日本にも、難治性てんかんに苦しむ患者さんがいます。大麻草由来成分の医療用途でのニーズが高まったという点が、今回の改正の経緯、目的の一つです。

 また、日本では2020年以降、若年層を中心とした大麻の乱用が問題視されており、その対策を講じる必要がありました。

 これを受けて、2021年1月から6月にかけて、厚生労働省は大麻等の薬物対策のあり方検討会を開催。大麻規制のあり方や、使用に関しての罰則規定などを議論しました。

 そして翌2022年に、厚生労働省に大麻規制検討小委員会が設置され、大麻規制や大麻由来成分の医療用途での使用等について、4つの方向性が示されたのです。

 まず、大麻草から抽出した成分を含む医薬品を承認するための規制見直しです。また、大麻乱用防止のための施策も盛り込むことも決定しました。

 さらに、規制対象の変更です。今回の改正で規制対象となるのは、大麻草に含まれるテトラヒドロカンナビノール(以下、THC)という成分です。THCは精神活性作用を有し、大麻利用により多幸感や陶酔感を与える成分として知られています。

 これまでの大麻取締法の規制対象は、成熟した茎や種子及びその製品に限定されていました。これを「部位規制」と言います。今回の改正で、大麻の取締方法は「部位規制」から「成分規制」に移行します。大麻草由来のTHCを高濃度に含む製品が規制対象となるのです。

 そして、2025年3月1日には「大麻草栽培の規制に関する法律」が施行されます。この法律は、医薬品利用が期待される成分を多く含む国産の大麻草の生産を促進することを目的としています。

──従来のてんかん薬と、大麻草抽出成分を含むてんかん薬には、どのような違いがあるのですか。