日本で生まれ育った人ならば、折り紙との接点なくして大人になる人は稀だろう。そう思わせるほど、折り紙は日本人にとっては慣れ親しんだ文化なのではないだろうか。
そして、大人になっても趣味として折り紙を嗜む人もいるし、折り紙アーティストとして生計を立てている人もいる。中には、折り紙の研究で大学教授になる人も存在する。
なぜ折り紙の研究をしているのか、折り紙でどのようなかたちをつくることができるのか──。折り紙の研究で本当に大学教授になった三谷純氏(筑波大学システム情報系教授)に話を聞いた。
──三谷先生のご専門はコンピューターグラフィックスとのことですが、なぜ、折り紙の研究をしているのでしょうか。
三谷純氏(以下、三谷):幼少からのペーパークラフト好きが高じて、大学、大学院では紙工作用のソフトウェアの研究をするに至りました。
当時、研究していたのは、切り貼りを含む紙工作用のソフトウェアです。このようなソフトウェアは板金などによる工業製品の制作にも役立ちます。切り貼りもOKとなると、プラモデルのように紙を組み立てることができます。なので、わりとどんな形状のものもつくれてしまう。
そこで、もう少し難易度を上げてみようということで、ソフトウェアが形状を設計できる材料の対象を1枚の紙に絞り込みました。もちろん、切り貼りもなしです。
1枚の紙を折ってつくれるものの形状には限界があります。それが面白くて、研究する価値があると思い、気付けば折り紙研究歴は20年になりました。
──具体的に、どのような研究をしているのですか。
三谷:一例ですが、立体的な形状の折り紙を設計するORI-REVOというソフトウェアを開発しました。
ORI-REVOは、操作画面上でいくつかの点を指定すると、点を結んだ線を縦軸中心に回転させたときにできる立体と、その立体の展開図を自動で計算することができます。断面を指定するだけで展開図ができるというところがポイントです。
展開図はダウンロード可能ですので、折り線通りに折ればORI-REVOでデザインした形状を再現することができます。
ORI-REVOが面白いのは、折り線を曲線にできるところです。普通の折り紙では、曲面をつくることは非常に難易度が高い。曲線を折ることが難しいからです。でも、ORI-REVOでは折り線を曲線にした形状をデザインすることもできます。
ただ、曲線を折るのはやはり大変ですので、カッティングプロッタでガイド線のようなものをつけてから折るようにしています。
──なぜ、そこまで曲線、曲面にこだわるのでしょうか。