「育成就労制度」を含む改正出入国管理法が6月14日、参議院本会議で可決・成立した(写真:共同通信社)「育成就労制度」を含む改正出入国管理法が6月14日、参議院本会議で可決・成立した(写真:共同通信社)

 長らく人権の観点から問題視されてきた「技能実習制度」。それに代わる新たな外国人雇用制度「育成就労制度」を含む改正出入国管理法が6月14日、参議院本会議で賛成多数で可決・成立した。2027年までの施行を目指す。

「国際貢献人材育成」から「人材確保と人材育成」へと制度の目標も変更され、これまでの技能実習制度の中では禁止されていた転籍(外国人労働者の転職)も、新制度では一部の要件を満たせば可能となる。

 技能実習制度の問題はこれで解決するのか。特定非営利活動法人、移住者と連帯するネットワーク(移住連)の共同代表理事で、この問題に長らく携わってきた鳥井一平氏に話を聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)

──新たな外国人雇用制度「育成就労」が成立しました。この新制度に関して、どんな印象をお持ちですか?

鳥井一平氏(以下、鳥井):結論から言えば、「技能実習制度」時代の奴隷制度は「育成就労」になっても変わっていないと思います。

 この制度では、労使対等の原則が担保されていません。「仕事を選ぶ」「仕事をやめる」ということに関して、外国から来る方々に自由がない。これが技能実習制度の問題でしたが、育成就労になっても、こうした部分の自由が担保されていません。

 労働者自身が仕事を選ぶことができる。労働者自身に仕事をやめる権利がある。これが最も重要なことです。それを依然として「育成」という言葉に置き換えて、自由を阻害している。

──従来の技能実習制度では「転籍(労働者の転職)が認められない」ことが大きく問題視されていました。新法では「やむを得ない事情がある場合」「本人の希望による場合」など、一定の要件においては転籍が認められるようです。ただ、転籍に関しては、一定期間の就労が必要になる見込みです。

鳥井:そうです。転籍に関する部分の問題は改善されていません。「やむを得ない事情がある場合」「本人の希望による場合」など、ここで言われている「一定の要件」を満たすのは、外国から来た方々にはハードルが高いのです。

 日本語がほとんど分からず、日本のシステムをよく知らない外国人が、現状の職場の人間関係中心の生活の中で、どうやって他の仕事の採用募集にエントリーしていけるのか。支援機関のヘルプなしには、まず転職できません。外国人労働者が自らアクセスできる制度設計になっていないのです。

 日本語の習得も簡単ではありません。職場の中で、言葉が上達していく人が全くいないわけではありませんが、日本語として使えるものにしていくのは大変です。そこで、賃金から奪われることなく、いかに学ぶ機会を得ることができるのか。ここもよく考える必要があります。

──現状、日本語を学ぶというのは、皆さんどのようにやっているのでしょうか。自分でお金を払って学んでいるのか。勤め先が出してくれるのか。それとも何もないのでしょうか。