次々と特徴的な閣僚人事を発表し、早くも各国に制裁関税を課すと脅しをかけ始めたトランプ次期大統領。貿易戦争の果てに何が待っているのか。ウクライナ戦争やイスラエルを中心とした中東情勢には、どのように介入していくのか。米国政治の研究者で、防衛大学校長の久保文明氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)
※このインタビューにおける久保文明氏の発言は、個人の見解に基づくものであり、政府の公式見解を示すものではありません。
──経済、安全保障、国内問題など、様々なテーマがありますが、トランプ氏はどんなことに積極的に取り組むとご想像されますか?
久保文明氏(以下、久保):2017年のトランプ政権とは違い、今回はかなりスタートが早いと感じています。
第1次トランプ政権では、大統領に選出されると確信できずに選挙を闘っていたので準備不足でしたが、今回は政策を推し進めていくためのシンクタンクを既に用意しています。忠実な支持者もたくさんいて、閣僚人事も矢継ぎ早に名前を挙げて積極的に進めています。
第2次トランプ政権では、不法移民の大量退去処分に着手する可能性があります。また、米司法省や米軍の人事に大々的に手を入れる可能性もあります。自分を訴追した司法省の官僚を追放したり、左遷したりと報復人事に出るかもしれません。
地球温暖化政策に懐疑的なスタンスを取ってきたトランプ氏ですから、改めてパリ協定からの離脱があるかもしれません。EV化を促進する連邦政府の措置を撤廃したり、緩和したりする可能性もあります。
外交政策においては、ウクライナ戦争をなるべく早期に終わらせるために、ウクライナ側に圧力をかけ、停戦に同意しなければ、武器や資金の提供を止めると主張する可能性があります。メキシコ、カナダ、中国に対しては、既に高い関税を課すと表明していますが、さらに多くの国々が対象になっていく可能性も少なくありません。
──司法省の人事にはいかにも手を入れそうですが、米軍の人事にも手を入れる必要があるのですか。