トランプ氏が米軍の人事で仕掛けそうなこと

久保:トランプ氏は、ポリティカルコレクトネス(PC)の観点から、バイデン政権下では人種や性別など平等性を重んじた軍隊の人事が行われてきたと見ている可能性があります。トランプ陣営から見ると、これは適正でないということになります。ですから、これに該当する軍高官が更迭されるかもしれません。

──人種やジェンダーなどの平等性は、今回の大統領選でも、ややテーマだった印象もあります。この点について真剣に考えている人は、それほど多くないのでしょうか。

久保:その点は、分極化が進んでいると思います。平等性が重要だと考える人々もいれば、それと異なる考え方をむしろ強めている人もいる。こうした感覚の違いは、教育格差と政党の支持基盤の関係性を反映しています。

 50年くらい前まで、米民主党は労働者の支持を基盤とした政党でしたが、今は顕著に高学歴の人を支持基盤としています。

 共和党は逆に、半世紀前は高学歴の人々が支持基盤だったのに対して、トランプ氏が大学を出ていない白人層の票をごっそり取っています。この層はPCに無関心だったり、むしろそれに嫌悪感を持っていたりします。彼らはむしろ、PCに正面から挑戦するトランプ氏の主張に共感しているのです。

──米中関係の今後についてはいかがでしょうか?

久保:第1次トランプ政権で国家通商会議(NTC)委員長を務めたピーター・ナバロ氏が、貿易・製造業担当の上級顧問に起用されました。また、マルコ・ルビオ上院議員が国務長官に指名されています。

 さらに、米陸軍特殊部隊「グリーンベレー」の元隊員のマイク・ウォルツ氏が国家安全保障担当大統領補佐官に指名されています。その副補佐官はアレックス・ウォン氏のようです。こうした人々は、通商か安全保障かなどの力点の違いはあれ、皆対中強硬派です。

国務長官への起用が決まったルビオ上院議員(写真:AP/アフロ)国務長官への起用が決まったルビオ上院議員(写真:AP/アフロ)