原油の供給過剰懸念が強まっている。中国石油最大手は10日、中国の原油需要が2025年にピークを迎えるとの見方を示した。従来予想を5年前倒しした。原油価格は1バレル60ドル割れが現実味を帯びている。ただし、シリアのアサド政権崩壊によってイランとイスラエルが全面衝突するリスクが確実に高まっており、ホルムズ海峡閉鎖という最悪の事態への懸念も依然としてくすぶっている。
(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)
米WTI原油先物価格(原油価格)は今週に入り、1バレル=67ドルから70ドルの間で推移している。先週末のOPECプラス(OPECとロシアなどの大産油国で構成)の決定への失望売りが優勢だったが、その後、地政学リスクが意識され、上昇に転じた。
まず、いつものように世界の原油市場の需給を巡る動きを確認しておきたい。
OPECは12月11日に発表した月報で、世界の原油需要の見通しを今年は前年比日量161万バレル増、来年は同145万バレル増とそれぞれ引き下げた。前月は「今年は日量182万バレル増、来年は同154万バレル増」と予測していた。見通しの引き下げは5カ月連続、下げ幅も今回が最大だ。
OPECは中国のほか、インドや他のアジア諸国、中東、アフリカの需要状況を踏まえて下方修正したとしている。中国の10月の原油需要は前年比日量8万1000バレル減少したと分析している。
OPECの雄であるサウジアラビアは来年1月のアジア向け主要油種価格を4年ぶりの低い水準に設定した。
下方修正をしたものの、OPECの予測は依然として他に比べて楽観的だ。
国際エネルギー機関(IEA)は12日に公表した月報で、世界の今年の原油需要の伸びを日量84万バレルになるとの見方を示し、先月の予測から8万バレル下方修正した。来年の伸びについては日量110万バレルと前月から11万バレル引き上げた。
世界の原油需要の懸念材料となっている中国の11月の原油輸入量は前年比14.3%増の日量1181万バレルだった。7カ月ぶりの前年増だ。原油価格が下がったことでサウジアラビアやイラクからの調達を増加させる一方、イラン産原油を買い控えた。だが、年間ベースの輸入量は前年割れになるのは確実な情勢だ。
中国の原油需要自体が減少し始めるのもコンセンサスになりつつある。