韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が12月3日夜、突然、「(野党側の言動は)内乱を企てる明白な反国家行為だ」などとして、非常戒厳を宣言しました。韓国では1980年以来、44年ぶりとなる戒厳令の布告です。その後、韓国国会は憲法の手続きに従って非常戒厳の解除を議決し、宣言はわずか数時間で効力を失いました。この「戒厳令」は韓国に限らず、これまで多くの国で出されています。戒厳令、およびその発令を可能とする憲法の緊急事態条項について、やさしく解説します。
(フロントラインプレス)
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韓国で出された「戒厳令」、そもそもなに?
戒厳令(martial law)とは、戦争・紛争や内乱、大災害など平穏な日常とは異なる非常事態に際し、通常の立法・司法の全部、または一部を一定期間停止し、それらの権能を政府(行政)や軍部に集中させる法令を指します。
戒厳令が発令されると、国民の権利は大きく制限され、外出やデモ・集会などは自由にできなくなります。外出禁止令(curfew=カーフュー)が出ることも珍しくありません。法律と同等の効力を持つ命令が議会の審議を経ずに発令され、テレビや新聞などの報道機関は政府・軍部のコントロール下に置かれることも多々起きます。
近代国家は、国民の人権を保護・保障し、その範囲を拡大することで強固な民主主義社会を築き上げてきました。それなのに、なぜ、議会を停止したり、人権を制限したりする権限を国家に与えてきたのでしょうか。
多くの場合、戒厳令の根拠は憲法に示されています。
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