子どもたちの給食に、主に地元産の有機食材を使用する「オーガニック給食」が、全国拡大のスピードを上げている。実施自治体は、2022年度に193市町村に上り、前年度から4割も増加。「子どもに安心安全な食べ物を」という思いだけでなく、関係者は「農業の生き残り」も懸けて垣根を越えた協力に乗り出している。12月8日の「有機農業の日」を前に、オーガニック給食のいまを報告する。
(益田美樹:ジャーナリスト)
熱気に包まれた「オーガニック給食」イベント
「農業の更なる発展、日本の子どもたちの明るい未来を祈念申し上げまして、ご挨拶とさせていただきます!」
2024年11月8日、茨城県常陸大宮市で開かれた「第2回全国オーガニック給食フォーラムin常陸大宮」。実行委員長の鈴木定幸・常陸大宮市長がこう声を張り上げると、ホールを埋めた912人から盛大な拍手が起こった。
会場には、普及に取り組む市町村、JA、生協、市民グループ、それに、農林水産省、文部科学省の担当者らが全国から詰め掛けた。さらに、オンライン中継を通じて個人240人と、サテライト会場39カ所の参加者が視聴(主催者発表)。オーガニック給食普及の課題やヒントが披露され、発展に向けた決意表明が参加市町村やJAのトップから次々に示されると、常陸大宮市の会場は熱気に包まれた。
日本での認知度は高くはないが、オーガニック給食は世界的な潮流となりつつある。
背景にあるのは、食べ物に起因する病気、地域農業の衰退、気候変動や生物多様性の危機といった食と農に関する諸問題の深刻化だ。それらを同時に解決する方策として、有機農業が2000年代ごろから盛んになり、オーガニック給食もそのけん引役として期待を集めるようになった。
消費することで地域の有機農家を支え、環境を守り、子どもたちの健康を向上させられると考えられているからだ。フランスや韓国などの取り組みが、先進事例として紹介されることが多い。
もっとも、日本でもオーガニックという言葉がまだ一般的ではなかった1980年代ごろから普及活動は始まっていた。いずれも「健康によい給食を子どもたちに食べさせたい」と願う保護者や、「安全な食材を子どもたちに食べてほしい」と努力を続けた有機農家の支えで続いている。
ただ、有機農産物の安定供給や価格面などの課題は山積。地域の実状に合わせて関係者が柔軟に対応しなければ実現できない難しさがあり、全国的な広がりには至っていなかった。
潮目が変わったのは、ほんの2、3年前だ。