「農協が抵抗勢力になってはいけない」
秋山組合長は「輸入自由化が進み、農産物に付加価値をつけなければ立ち行かなくなる。環境面でも世界で取り組みがされている中、農業も変わらなければならない」と率直に語る。当初は内部にも大きな反対にあったが、世界の情勢を説き、「農協が抵抗勢力になってはいけない」と1年以上も説得を続け、生産を担当する子会社で取り組みをスタートできるようになった。
JA常陸によると、有機農業で作った稲はしっかりと根を張り、高温にも負けなかった。収量はやや落ちたが、食味値も高く、市が学校給食用に購入したことで農家にとっては所得増の結果をもたらした。
それを見て「やってみよう」という農家が出てきた。JA常陸では、この流れを後退させないためにも、オーガニック給食を取り入れる学校を増やすなどし、流通ルートを拡大しようとしている。
日本の有機農業面積は、2022年度末には3万300ヘクタールだった。「みどりの食料システム戦略」が掲げる目標の3%に過ぎないものの、伸び幅は前年度と比べて倍以上となり、拡大のスピードは上がっている。
この伸びには、オーガニック給食の普及も寄与しているとみていいだろう。生産者にとって、確実に生産物を受け入れてもらえる消費者の存在は大きい。オーガニック給食がさらに普及し、多くの市町村で実践が始まれば、有機農業面積の目標達成も夢ではない。
もっとも、オーガニック給食の拡大に複雑な思いを抱える農家もいる。