給食のコメも野菜も調味料もオーガニックに
政府のこうした動きが、オーガニック給食に踏み出したい市町村を後押ししている。
冒頭で紹介した「第2回全国オーガニック給食フォーラム」の開催地だった常陸大宮市もその1つ。「子どもたちに最高の学校給食を届ける」を公約に掲げていた鈴木市長は2023年11月、茨城県内の他市町村に先駆けて「オーガニックビレッジ宣言」を行った。
さらに翌12月、有機農家と慣行農家(農薬や化学肥料を使用する従来の農業従事者)がそれぞれの栽培を理解しながら協力し、地域ぐるみで有機農業を促進していく協定の締結に成功した。一部の地区だが、慣行農家から協力を得てこの種の協定を結ぶ例は全国初と言われている。
こうした努力の甲斐あって常陸大宮市の学校給食は、コメは2027年にオーガニック100%を達成できる見通しだ。野菜や調味料も「できる限りオーガニックに切り替える」(鈴木市長)予定。生産したコメを使った米粉パンの製造についても意欲を見せている。
常陸大宮市をカバーするJA常陸も、全面的に協力している。オーガニック給食の課題の1つは有機農産物の「安定供給」だ。このため組織力のあるJAへの期待は大きい。秋山豊組合長も「市長の思いに共感し、私たち農協としても有機農業に取り組もうと思った」と話す。
ただ、協力の動機は共感だけではない。秋山組合長によると、このままでは生き残れないという危機感もあったという。