長年にわたって作られてきた定番品は、“当たり前”の良さを持っている。誰もが日常的に使えて、しかも品格あるスタイル作りの役に立つ。そして流行にとらわれず、末長く愛用できるところも魅力的。なかでも独自の哲学を込めつつ、素材や製法にもこだわりを尽くした真のマスターピースを紹介する。

写真/青木和也 スタイリング/荒木義樹(The VOICE) 文/長谷川剛 編集/名知正登

ジーンズらしく気軽でありつつクールな印象

 歴史は繰り返される。特にファッションは一時期流行ったアイテムが徐々に衰退し、数十年後に再び脚光を浴びるということはよくある話だ。今回のブラックジーンズも同様である。ブルージーンズは労働着として19世紀半ばに生まれ、カジュアルウェアとしては1950年代に広まり始め、1970年代には若者のファッションアイテムとして世界の隅々に浸透した。そしてそれに代わるフレッシュなデニムパンツとして、1980年代に注目を浴びたのがブラックジーンズだ。

 そもそもブラックデニムのカラーは、一般的に黒色の硫化(サルファ)染料を用い染められたもの。昨今はブルーデニムも合成インディゴに硫化染料をミックスし、最適なブルーが作り出されているという。近年はより手軽な合成染料も開発されてはいるものの、サルファ系染料は耐摩擦性が限定的であり、それゆえ穿き込みにより風合いが出やすいことから、ジーンズやチノパン等に積極的に用いられているのだ。

 そんなブラックジーンズだが、昨今に至って再び高感度な若者を中心に、静かな盛り上がりを見せている。ここではトレンド的なブラックジーンズの現状は省略するが、大人が選ぶジーンズとしてブラックのもつシックな印象は、やはり注目すべきものがあると強調したい。

 確かにブルーの爽やかさや若々しさは捨てがたい。しかし一方で、その青さを土臭くカントリーな雰囲気に感じる人も多いのだ。そこへいくとブラックは多くのファッション誌が指摘するように、都会的でありスタイルが引き締まって見えるカラー。テーラードジャケットにしてもレザーブルゾンにしても、ブラックジーンズを合わせた装いは、どこか精悍でクールな印象が漂うもの。そういう意味でも大人のカジュアルパンツとして、ブラックジーンズはぜひ活用したい一本なのだ。

 今、選ぶのであればパンツ専業ブランドの定番ブラックタイプがオススメとなる。そしてシルエットは立ち姿がスマートに見えるストレート及びスリムフィットが正解。トレンド的には裾広がりのブーツカット型も話題だが、これはファッション上級者でないと穿きこなすのが難しい。また、いろいろなシーンでの穿き回しを前提とするなら、ダメージや色落ちの激しくない、クリーンな一本を選ぶことが失敗しないコツである。

 

1. Levi's Made in Japan

ジーンズ¥26,400/リーバイス メイド イン ジャパン(リーバイ・ストラウス ジャパン)

頂点ブランドが打ち出す日本製の最上モデル

 ジーンズの世界的トップブランドといえばリーバイス。本国の米国が原点であるが、より良質なジーンズを追求し「メイド・イン・ジャパン」シリーズが打ち出されている。欧米のトップメゾンも一目置く日本製のカイハラデニムを使用し、熟練の職人技にて作られた一本は、穿き込むことにより現れるシワやアタリまでもが最上級。

 写真の一本は大定番の「501」よりもスリムにテーパードを効かせた「512」モデル。都会的なブラックジーンズのシャープな印象が引き立つ一本である。通常とは異なるブルーのレザーパッチに加えポケット脇の青いタブ、青耳のセルビッチ・デニムなど、こだわりのディテールがスペシャリティを伝える。