
高精度機械式時計からの継承
腕時計にはさまざまな機能を搭載したモデルがあるが、もっとも重要で基本となるのは、やはり精度だろう。いまから57年前、クォーツ式腕時計が誕生した1969年に、セイコーは機械式時計にも当時最高の精度を誇るモデルを誕生させている。それが月差±1分以内という『グランドセイコーV.F.A(Very Fine Adjusted)』であった。
その後、クォーツ腕時計が時計界を席巻している70年代後半に、機械式腕時計をクォーツ式時計のような高精度を目指したプロジェクトが発足した。それがゼンマイの力を利用して水晶振動子をを動かすというスプリングドライブである。
そして2004年に、実用性の高い自動巻と約72時間のパワーリザーブを備えた、グランドセイコー専用設計のスプリングドライブ・ムーブメント「キャリバー9R65」を完成させたのである。その後もセイコーはこの技術を進化させ続け、約20年後に完成させたのが、ゼンマイ駆動式の腕時計としては世界最高水準の年差±20秒という高精度を実現したスプリングドライブ「キャリバー9RB2」。2025年、それを搭載した『スプリングドライブ U.F.A(Ultra Fine Adjusted)』が発表されたのだ。
この「キャリバー9RB2」は、3か月間の入念なエージングを経て精度を安定させた水晶振動子を、新設計のICとともに真空に密封し、温度、湿度、静電気、光などの影響を最小限に抑えることで、高精度を実現させたのだ。封入されたICは、個々の水晶振動子の周波数を複数の温度で測定して得られたデータをもとにして温度補正を行っている。
年差±20秒(平均月差±3秒相当/気温5℃~35℃において腕に着けた場合)、約72時間パワーリザーブ
ムーブメントの造形は「霧氷仕上げ」
さらにこの新ムーブメントには、スプリングドライブ史上初めて、精度を補正するための緩急スイッチを採用。これによって、経年使用で発生する可能性がある精度のズレをアフターサービス時に補正することができるのだという。
ムーブメントの造形は、「キャリバー9RB2」の製造地「信州 時の匠工房」から望む北アルプスの山々をモチーフにしており、その表面には、霧が凍結したかのような「霧氷仕上げ」が施されている。
Ref.SLGB003 自動巻き(スプリングドライブ Cal. 9RB2)、ブライトチタンケース、37mm径、 146万3000円
また、最新鋭の技術が投入された『スプリングドライブ U.F.A』は、小型化、薄型化を実現しており、ケース径37mmはキャリバー9R搭載モデル史上もっとも小さいサイズとなっている。そして、実用性を常に追求しているセイコーだけに、ブレスレットもセイコー独自の素材「ブライトチタン」を採用することで、ステンレススティールよりも約30%軽量となっている。ブライトチタンは純チタンよりも明るいので、※ザラツ研磨を施すことで上質な輝きを放つ。
※ザラツ研磨:円形の定盤を回転させそこにケースを押し当てて面をならすことで歪みのない平面を生み出す
最後になったが、腕時計のデザインはグランドセイコーの独自のデザイン文法「エボリューション9スタイル」がベース。その顔でもあるダイヤルは、工房がある諏訪の霧ケ峰高原で見られる樹氷を表現している。光の変化によって美しく煌めく表面加工を施すことで、淡いブルーの色合いでありながらも存在感のあるダイヤルとなっている。
