サステナブルなシャンパーニュの造り手として新しいスタイルを確立している「テルモン」がラインナップ中でも非常に重要な『レゼルヴ・ド・ラ・テール(オーガニック)』の新バージョンをリリース。さらにそのロゼ版となる新作『レゼルヴ・ド・ラ・テール・ロゼ(オーガニック)』も追加した。その出来栄えとは?
テルモン レゼルヴ・ド・ラ・テール(オーガニック)TELMONT RÉSERVE DE LA TERRE (ORGANIC)
希望小売価格:12,800円 (税別)
品種:ムニエ 44% / シャルドネ 33% / ピノ・ノワール 23%
デゴルジュマン:2025年
ドザージュ:5.6g/L
2021年収穫 36% / リザーブワイン 2020年 64%
これがテルモンの本命のはずだが……
テルモンの新作シャンパーニュ 『レゼルヴ・ド・ラ・テール・ロゼ(オーガニック)』と新バージョンの『レゼルヴ・ド・ラ・テール(オーガニック)』がリリースされた。
これらを私が味わったのは2025年の10月末の話なのだけれど、テルモンは2031年までには栽培・生産の完全オーガニック化を予定している。現在、もう2026年になってしまったので、あと5年。だから、いまでこそ(オーガニック)とわざわざ主張している『レゼルヴ・ド・ラ・テール』は、ごく近い将来、テルモンのスタンダードになるものと私はいつも思っている。
なにせシャンパーニュは最短でも15カ月熟成。3年以上熟成させるものもそれなりにあるし、今回話題にする新作の『レゼルヴ・ド・ラ・テール(オーガニック)』は……これはちょっと変わったシャンパーニュで2021年収穫のブドウからできたワインが最新なのだけれど、それは全体の36%使用されているに過ぎず、残り64%は2020年 のブドウからできている……おおよそ5年熟成させたシャンパーニュなのだ。ワインの世界での5年なんて、そんなものである。いま、テルモンが生産しているシャンパーニュはかなりの分量がオーガニックワインだと考えていいんだと思う。
ということはつまり、今後数年だけでなく100年とか200年とかいうスケールで続くであろうメゾンの歴史の最初の一歩を知るつもりで、私は毎回『レゼルヴ・ド・ラ・テール』に向き合うのだけれど、最新のものを含めて3作品がリリースされている『レゼルヴ・ド・ラ・テール』は、その3作品すべてがそれなりにキャラが違っている。
とはいえ、ここまでテルモンを味わってきて、わかってきたことがそれなりにある。それはテルモン全作品に共通する個性、あるいはもうブランドのアイデンティティみたいなものだと思うけれど「Airly(エアリー)」という感覚だ。文字通りに訳せば「空気っぽさ」であり、もうちょっと意訳すれば「軽やかさ」。充実、凝縮、重量感といったものが褒め言葉になりがちなワインの世界では、一般的にあまり好意的には受け止められない官能性だと思うけれど、これがどこでどう表現されているかがテルモンの作品を味わう際の最重要注目点だと私は考えている。
2022年に味わった初代『レゼルヴ・ド・ラ・テール』は、2017年収穫のブドウから造られていた。私はこれが好きだったけれど、後から考えると、これはAirly度が低かった。
2024年、その次となる2018年、2019年、2020年をブレンドした2代目『レゼルヴ・ド・ラ・テール』が登場した。ここでAirly度が急激に上がった。私は、この初代と2代目との間にある2年ほどで、テルモンの色々な作品を味わっていたおかげでAirly耐性がついていたようで、そこまで大きな衝撃はなかったけれど、周囲のワインの専門家・愛好家たちには難色を示す人が少なくなかったのは事実で、その気持はよくわかった。ただ一方で、そういう言ってしまえばワインマニア以外には、この2代目のウケはすこぶるよかった。
もし将来『レゼルヴ・ド・ラ・テール』がスタンダード化するのであれば、この一般にウケがいい、という結果は重要だ。いかなる商品でもスタンダードはマジョリティーにウケるべきだからだ。高度なドライビングスキルを乗り手に求めるクルマを造ってクルマ好きに絶賛されたとしても「これを100万台売りたい」とメーカーが言うのであれば、それはムシがいいというか無謀な話だ。
だから3代目は2代目の路線を引き継ぐと思っていたのだけれど……
3代目の選択
ここから先は長いので結論を簡単に先に言うと3代目『レゼルヴ・ド・ラ・テール(オーガニック)』と新作『レゼルヴ・ド・ラ・テール・ロゼ(オーガニック)』は、2代目が好きだった人には超オススメだ。2代目の良さはそのままに、めちゃくちゃ質が上がっているからだ。
以上。
長い話を再開すると、3代目は2代目の上に、初代が乗っかっているような感じだった。
実際のブレンド比率から言っても、2代目は2020年のブドウの使用量が70%で3代目は64%なので、あながち間違っていない気がしている。
2代目からの明確な変化点はぎゅっと引き締まった酸味で、しかもこの酸味にはよく熟した良質なブドウならではの豊かな表現があって、特に液体の温度が低い状態では非常に好ましい。この質的向上の要因は、天候には必ずしも恵まれなかったにしても収穫されたブドウが優れていたという2021年と、その実力を引き出した造り手の技術のはずだ。ここに関しては初代の正当進化版といった雰囲気だ。
こういう優れたワインの足元に、ガチッとした土台があると伝統的・一般的な「よきシャンパーニュ」なのだけれど、ここまで散々言ってきたように、このベースになっている2020年は実にAirly、というところがテルモンの個性。2021年が空中に浮かんだような、これまで体験したことのない感覚だった。
これをどう解釈したものだか旧来の価値観に縛られている私は、挑戦状を叩きつけられた気分になって、何か手掛かりが欲しいと新作『レゼルヴ・ド・ラ・テール・ロゼ(オーガニック)』に手を伸ばした……
レゼルヴ・ド・ラ・テール・ロゼ(オーガニック)TELMONT RÉSERVE DE LA TERRE ROSÉ(ORGANIC)
希望小売価格:14,500円 (税別)
品種:シャルドネ 38% / ピノ・ノワール 35% / ムニエ 27%
ドザージュ:6.4g/L
セラーでの貯蔵期間:3年
私のテルモンのロゼへの評価はいつも高い。伝統的・一般的な「よきロゼシャンパーニュ」とはだいぶ違った雰囲気だけれど、かといって伝統的・一般的な「失敗気味のロゼシャンパーニュ」とは明らかに違う。高度なシャンパーニュであることは明らかで、作家性とでも言うべき訴えかけてくるものがあるのが私の好評価の理由だ。で『レゼルヴ・ド・ラ・テール・ロゼ(オーガニック)』もそうだった。香りにも味わいにもある種の苦みがあって、やや甘いニュアンスもある。ぎゅっと引き締まった酸味、複雑に織りなされた様々な風味は実に素晴らしい! が、これもまた、Airlyな層の上に浮き上がったような雰囲気だった。
データを教わると2020年のブドウが55%、2021年が45%だそうで、コート・デ・バール産ピノ・ノワールから造られた赤ワインを15%ブレンドしているという。バランス的にロゼじゃない方の『レゼルヴ・ド・ラ・テール』に似ているけれど、それぞれを構成するブドウの産地と比率はバラバラで、それはつまり、それぞれを意図的に、意志を持って、こういうスタイルにまとめた、ということである。
テルモンはガンコである
最近はあんまり表に出てこなくなったけれど、数年前、CEOのルドヴィック・ドゥ・プレシに私は「いまいちあなたの目指しているシャンパーニュのよさがわからない」と言ったら、彼は要約すれば「今に見てろよ」と言って、以降、本当に新作ができるたびに私に試飲の機会をくれた。
この人物がCEOのルドヴィック・ドゥ・プレシ。テルモンは環境負荷低減のため800gの軽量ボトルを開発しており、最近は風力で動く帆走貨物船でシャンパーニュを輸送するなど、ワイン以外もAirly。でも、航空輸送は絶対にしない
私はそんなに特殊な人間ではないから、おそらく私のような反応は世界中であったはずだ。そういう人間のひとりとして私が確実に言えるのは、テルモンは決して自分たちのスタイルを曲げなかったということだ。
テルモンは創業年で言えば1912年だけれど、現体制になったのは2019年で、実質的にはまだ若い造り手だ。この頃はサステナビリティへの強いコミットメントを揺るがすことはないと明言する一方で、ワインは変化すると言っていた。
だから私は、もっと根本的に変化して、一般的な「よきシャンパーニュ」に近づくものだと考えていた。しかし、ここまで質的向上を果たしてもテルモンはスタイルを変えず、それはつまり一般的な「よきシャンパーニュ」には近づかない。実力不足でそれができない、ということではなく、できるけどやらないのだと、いまや私は信じている。それくらい、今回の『レゼルヴ・ド・ラ・テール』と『ロゼ』はよくできている。そして私の知らなかったシャンパーニュだ。
2025年10月、長年、テルモンのワイン造りの長だったベルトラン・ロピタルが一線を退いた。後任は、ベルトランのアシスタントを務めていたブリス・ブザンという人物だという。テルモンのこの基本的なスタイルが変わることはないとは思っているけれど、ブリス・ブザンはどんなワインを繰り出してくるのか? 今後は、ベルトランの残した作品が逐次、5年くらいかけてリリースされるだろう。そしてオーガニック化した新しいラインナップが出てきて、そのくらいからブリス・ブザンによるテルモンが出てくる。そう考えると当分は、テルモンにワクワクさせられることになりそうだ。
