大谷 達也:自動車ライター
ハイブランドのスニーカーのようなレクサス、作れるか?
「このスニーカーのようなクルマを作れないか?」
そういって豊田章男社長(当時。現会長)が示したのは、フランスのファッションブランドであるメゾンマルジェラが作ったスニーカーだった。“レプリカ”という名の彼らの代表作は、現在8万円以上で販売されているほどラグジュアリーな商品。それを高価なサルーンやクーペではなく、「コンビニへの買い物に使えるカジュアルなクルマ」として開発して欲しいというのが豊田元社長の「贅沢な提案」だった。
そこで開発陣が作り上げたのは、ヤリス/ヤリス・クロスをベースにしたSUVだった。全長4.19mのコンパクトな4ドアボディに3気筒1.5リッター・エンジンとハイブリッドシステムを組み合わせたパワートレインを搭載。プラットフォームはヤリス/ヤリス・クロスと同じGA-Bと呼ばれるものを用いたが、様々な改良を施した結果、跡形もないほど別物に生まれ変わったそうだ。
私は昨年9月に、LBXのプロトタイプに試乗したが、そのときはベースモデルに比べて足回りの動き方がしっとりとしてしなやかなものに変わっていたことにくわえ、ステアリングがボディにしっかりと取り付けられていることに感銘を受けた。いっぽうで、3気筒エンジン特有の安っぽい振動やノイズが明確に伝わってきたほか、電動パワーステアリングの感触がまるでテレビゲームのように安っぽかったことにいささか落胆したことを記憶している。
しかし、今回試乗した量産仕様のLBXは、そこからさらに大きく進化していたのでご紹介しよう。