今尾 直樹
これはものすごくイイ!
レクサス初のBEV(バッテリー電気自動車)専用モデル、RZ(アールズィー)450eを公道で初めて走らせた。距離にして40km、都内の湾岸エリアの一般道をウロウロしただけだけれど、う〜ん。これはものすごくイイ! と、そう思った。
レクサスRZの冒険は、ブレーキ・ペダルを踏んで、ダッシュボードの丸いスターターを押したときから始まる。シートがスーッと前に動き、ほんの数秒待っていると、ダッシュボードのふたつのスクリーンにブルーの光の粒子が出てきて、最後に短い音楽とともにLEXUSの文字が現れる。お。と思う。知っていても、映画のオープニング、ユニバーサルとかMGMとか20世紀FOXとか、あるいは東宝とか松竹とか東映とか日活とかのマークが出てきたときと同じ、これからなにが始まるんだろう? というワクワクがある。
でもって、センター・コンソールの、押して回す式のギアのスイッチをDに入れ、アクセル・ペダルを踏む。それまで眠っていたRZは、たちまち錨を巻きあげ、ポカリと浮く。無音のまま。それから、おもむろにスーッと走り始める。あたかもリニア・モーターカーのように。
ポカリと浮く。というのは、それぐらい抵抗感がない、という意味で、実際に浮くわけではない。停止すると、錨をおろしたように大地に根づく感がある。重たいバッテリーを搭載するBEVは一般に車重が重い。RZも2トンを超える。その重たいクルマが前後、2基のモーターが発揮する強力なトルクによって、ポカリと浮いたように走る。
静粛性の高さにビックリで、でもその静粛性は無響音室みたいな静かさではないから、静かなことに気づかない。耳を澄ますと、周囲の音もエアコンの風の吹き出し音なんかも微かに聞こえてきたりする。