オーストラリア最大の都市・シドニーと2032年夏季オリンピック&パラリンピックの開催に沸くブリスベン、そして世界有数のビーチリゾートとして知られるゴールドコースト。国内外から多くの旅人が訪れるオーストラリア東海岸の三都市を、訪豪2回目の胃袋系ライターが旅する。まずはオーストラリア大陸の東、クイーンズランド州の州都・ブリスベンから。
リゾート開発に沸くブリスベンの最新5つ星ホテルとは
まさか自分がオーストラリアにハマるなんて、思ってもいなかった。フランス料理やイタリア料理を食べるにしても王道クラシックが好きだし、ワインも気づけば伝統産地のものばかり飲んでいるし、プライベートでの旅は欧州が多くて、古い建造を見て「ははぁ~」とおののき喜んでいるような人間だからだ。頭が固いのか、枯れているのか。とかく行動・体験範囲が狭くなりがちな我が人生にオーストラリアが風穴を開けてくれた。2023年、南部のワイン産地を巡り、短くともドラマのある歴史や食文化、そして自然に心を奪われた。
二度目の豪州、初めての三都市の旅はブリスベンから始まった。シドニー、メルボルンに次ぐオーストラリア第三の都市で、2032年のオリンピック&パラリンピックに向けて国内最大級のリゾート開発「クイーンズ・ワーフ・ブリスベン」プロジェクトに沸くエリアだ。その目玉となるのが今年8月末に開業した5つ星ホテル『ザ・スター・ブリスベン』。今回の滞在先だ。
客室は340室、日本食からイタリアン、シーフードレストランにラテンアメリカ料理などバラエティ豊かなレストラン、ブリスベン最大のボールルーム付きイベントスペースなどなどを備えたホテルは、ホテルというよりリバーサイドに浮かぶ一つの町のよう。地上100メートルからブリスベン中心地を一望できる屋上のスカイデッキにもバーやレストランがあり、サンセットタイムになれば毎晩パーティのように賑わう、今ブリスベンで一番ホットなスポットなのだとか。
新旧が美しく交わる、すべての人にオープンな町
『ザ・スター・ブリスベン』のある再開発エリアと、ブリスベンの文化発信基地であるサウス・バンク地区は、新たに完成した歩行者専用の橋で繋がっている。オーストラリア初の先住民国会議員の名を冠した『ネヴィル・ボナー・ブリッジ』。新旧のエリアが分断しない町づくり、その要となる橋に込められた土地の歴史への敬意が素敵だ。ギャラリーや人工ビーチ、リバービューの飲食店などが連なるサウス・バンクは、ブリスベン一の観光スポットでありながら、市民の憩いの場でもあり、すべての人に開かれている。見た目だけでない美しい光景に気持ちが温かくなった。
オーストラリア最後の銘醸地、グラニットベルトのワイナリー『シロメィ』
ブリスベンからゴールドコーストへ車で向かう道中、マウント・コットンという田舎町にある『シロメィ ワイナリー』にも立ち寄った。南オーストラリア出身、ゴールドコーストの不動産業で財を成したオーナーのテリー・モリス氏が、クイーンズランド州の中でも標高が高く冷涼なグラニットベルトに着目して2000年に創業。マウント・コットンから車で約3時間の場所にあるグラニットベルトは、成長著しいオーストラリアワインの最後の銘醸地で、『シロメィ』はグラニットベルトを牽引するワイナリーだ。「グラナイト(花崗岩)」由来の名の通り、痩せて水はけがよく、ミネラル豊富な土壌もワイン造りに適している。
標高600~1000メートルの畑は、オーストラリアを代表するメルボルン郊外の銘醸地・ヤラヴァレー(約500メートル)超え、イタリア・シチリア州のエトナ(300~1000メートル)級といえば、ワイン好きならイメージがわくだろうか。テイスティングしたワインは冷涼産地ならではの繊細さ、エレガントな酸に加え凝縮した果実のニュアンスもしっかり感じるもの。残念ながら今回、畑を見ることは叶わなかったのだが、オーストラリアワインのフロンティア、いつか訪ねてみたいと思った。
ワイナリー見学ツアーもあり、ショップやレストラン、ブライダル施設や宿泊施設を備えたワイナリーリゾートは、愛好家や旅行者に大人気で、週末はレストランの予約が困難なほどなのだとか。見晴らしのよいテラスを備えたレストランでのペアリングランチは、体験する価値ありだ。
胃袋系ライターのブリスベンメモ。
OTTO OSTERIA
サウス・バンク、リバーサイドの繁盛イタリアン。「どうせ眺望がウリの店でしょう?」とさほど期待せず(失礼!)にいたところ、料理もワインの提案も素晴らしく、食べなれた大人から小さな子供のいる家族連れまでくつろいで食事している様子もよかった。
Black Hide Steak & Seafood by Gambaro
『ザ・スター・ブリスベン』内のステーキ&シーフードダイニング。オープンキッチン内の巨大なステーキ専用オーブンで焼かれるオージービーフのステーキは、赤身の旨さがしっかり、かつ食後感が軽く毎週食べたいほど。タスマニア産のオイスターも素晴らしかった。
TUSCAN TERRACE
『シロメィ』のイタリアンレストラン。もう眺望だけでも文句ナシ!と、思っていたら(笑)、カジュアルモダンなイタリアンは、ワインに合うひと味が効いていて、ワインのバラエティも悩ましいほど豊富。ペアリングコース推奨、必ず予約を。