オーストラリア最大の都市・シドニーと2032年夏季オリンピック&パラリンピックの開催に沸くブリスベン、そして世界有数のビーチリゾートとして知られるゴールドコースト。国内外から多くの旅人が訪れるオーストラリア東海岸の三都市を、訪豪2回目の胃袋系ライターが旅する。今回はオーストラリア最大のビーチリゾート、ゴールドコースト。

地上77階、『スカイポイント展望台』から見るゴールドコーストの町並み

全長70km、白い砂のビーチが続くオーストラリア最大のリゾート

今回の旅で一番長く滞在したのがゴールドコースト。2024年のテレビドラマの話題作『ブラックペアン2』のロケ地にもなったオーストラリア最大のビーチリゾートだ。サーファーズパラダイスやバーレイヘッズなど世界中のサーファーが憧れを抱くサーフスポットが連なることで有名で、マリンスポーツや海水浴を楽しむ人たちでビーチはいつもカラフルに賑わっている。砂浜の白と海のライトブルーのコントラストが美しい海岸線のすぐそばに、高層ビルが立ち並ぶ市街地があるのもこの地ならではのランドスケープだ。

クワラビーチから徒歩5分の場所に位置するアパートメントホテル『ULTIQA Signature at Broadbeach』の21階客室

ゴールドコーストでは、アパートメントホテルに滞在した。タワー型高層建築で、調理道具もそろうキッチンや洗濯・乾燥機もありすこぶる快適。近年、界隈には長期滞在者をターゲットにしたこのスタイルのホテルが増えているそうだ。購入すれば日本でいうところの“億ション”という豪華な部屋で、数日間のタワマン暮らし気分を味わう。宿泊した21階の客室は、小さなバルコニーに出ると遠くにビーチが見えた。イーストコーストだから、朝は海から日が昇る。真っ赤な朝陽がビルのガラス窓を照らす様子がきれいで、見るのが楽しみで毎日早く起きた。

オープンエアのプールも。リゾートホテルともひと味違う、シティビューインフィニティプール

オーシャンビューレストランだらけの町で見つけたとびきりの大箱

オーシャンビューレストランなど珍しくない町だが、ある日の昼食に訪れた『クワラ サーフ クラブ』は印象的だった。日本国内ではなかなかお目にかかれない超大箱(200席以上?)が、週末だったということも相まってウェイティングがかかるほどの大にぎわいだった。

『クワラ サーフ クラブ』の週末の賑わい。会員専用のサロン等も別フロアに

ゴールドコースト初心者の私は知らなかったのだけれど、この町には海の安全を守るサーフライフセービングクラブ(SLSC)というボランティア団体が複数あり、ここはその団体のうちの一つのクラブが運営する施設。売上が活動資金になるから、食事をすることでSLSCをサポートすることにもつながるのだとか。美しい海を誰もが楽しめる環境は、当たり前ではなく、善意の人々の志で守られている。その施設が、多くの市民で賑わっている様子に、この地の真の豊かさのようなものを感じる。あと、ここで飲んだビールの、のけぞるほどの旨さは後述。

ゴールドコースト最大のショッピングセンター『パシフィックフェア』も駆け足で。限られたショッピングタイムにはスーパーを目指すべし!

 海だけじゃない! ユネスコ世界遺産の森を「ハイキング」

海のイメージが強いゴールドコーストだけれど、内陸部に進むとオーストラリアのゴンドワナ多雨林群として、ユネスコの世界遺産にも登録されているスプリングブルック国立公園がある。日照時間の短い冷帯雨林の森の中に入ると、さっきランチを食べ終えたというのにもう薄暗く、朝散歩したビーチが異国に思えるほど肌寒い。ツインフォールズサーキットと呼ばれるコースでの約2時間の「ハイキング」プログラムを体験したが、ハイキングなんて生ぬるいものではなかった。

ツインフォールズサーキットのハイキングコース。短い日照時間に加え、木々に覆われ、昼間と思えない暗さ

 大量の雨が降った翌日で、地面はぬかるんでいて歩くだけで体幹が鍛えられる。人生で初めてしがみついた木をポール代わりに崖の段差をすべり降りた(木が折れなくてよかった)。樹齢2000年(!)超えのナンキョクブナをはじめここでしか見られない植物いろいろもアメイジングで、歩きながら瞑想に誘われる。コースの名にもなっている一番の“映え”スポット、ツインフォールまでの道が前日の雨で崩壊していて残念だったが、それはそれで「また来いよ」と言われている気がした。

中央の隙間を抜け、さらに険しい道へ。スニーカーではなくトレッキングシューズがおすすめ

滞在中、アボリジナルの歴史や文化に触れられる『ジェルガル・アボリジナル・カルチャーセンター』も訪問した。ガイド付きツアーで、オーストラリア固有の動植物と自然とともにあるアボリジナルの生活様式、祭礼やアートについて見識を深めることができる。アボリジナル・アートのワークショップも体験。自分へのお土産にアートプリントの折り畳み傘を買った。 

アボリジナルアート体験。一つひとつの造形に火や川、人などの意味があると教わった

「アートの町」ゴールドコーストの未来はここから

車で約1時間で行き来ができるワールドクラスのビーチと森だけでもコンテンツ力が凄まじいのだが、アートについても触れておきたい。2021年、ゴールドコーストのアート拠点『HOTA(Home of the Arts)』に首都以外で最大のパブリックアートギャラリー『HOTA Gallery』がオープンし話題を呼んでいる。アートギャラリーとしては珍しい地上6階の建物で、常設展示から企画展まで、フロアを移動しながら楽しむ構造が新鮮だ。

『HOTA Gallery』。メルボルンを拠点とするデザイン事務所『ARM Architecture』の建築が目を引く

地元ゴールドコーストにちなんだ現代アートコレクションや先住民のアートも充実。子ども向けのギャラリーもあり、地域の学生のコンペティション作品の企画展を行うなど、ゴールドコーストから世界へ、アートの未来を見据えた取り組みもまぶしい。1階に併設されたレストラン『Palette Restaurant』は、ガストロノミー界でも注目されているそうで、今回は予定が合わなかったが次回は必ず予約したいとメモした。ギャラリーショップもセンス抜群。ギャラリーのすぐ近くで『HOTA Farmers Market』が開催される日曜日を狙い、一日をこのエリアで過ごしたい。 

野菜、果物、ナッツやスパイス、ストリートフードやコーヒーなどオーガニックのプロダクトを扱う出店者が軒を連ねる『HOTA Farmers Market』

 胃袋ライターのゴールドコーストメモ。

クワラ サーフ クラブ

度肝を抜かれたのがビールのおいしさ。フレーバーはもちろん、液体の芯まで冷えていてクリアで、一口飲んでグラスを二度見したほど。聞けば、ブルワリーから届いた樽は冷蔵室で一括管理され、直接カウンターのサーバーにつながるシステムになっている。つまり樽を、動かさない。毎日大盛況だから回転・鮮度も抜群。ビールの基本を思い出した。

オーストラリアのド定番、「XXXXゴールド」(ラガー)。今年飲んだビールでピカイチ旨く、帰国してからビール好きにアツく語り続けている。
パエリアにもトーストが付き、サンドイッチにはチップス(フライドポテト)が付き、アジアンヌードルはガツンと濃い味。ビールががんがん進む

HOTA Farmers Market

新鮮なオーガニック食材のショッピングはもちろん、ガレットからファラフェルサンド、たこ焼きまでインターナショナルなストリートフードがそろい、なかなか心が決められない。日本人が出店するグリーンティドリンクスタンドも長蛇の列だった。

もっとも長い行列ができていた、ドイツソーセージのホットドッグスタンド
プレーンのホットドッグにトマトとマスタードという守りのチョイス、大正解。ジュースは名残のパッションフルーツ、搾りたて

 BAM BAM bakehouse

ビーチのすぐそばにあり、屈強なサーファー集団から女子学生、家族連れまで幅広いゲストで朝早くから賑わっていた。甘いペストリーやドーナッツから、サンドイッチ、ナシゴレンなどのアジアンフードまで、はっとするおいしさで、コーヒーは東京でも愛飲の『Single O』。完璧。

カウンターでオーダーし、席まで運んでもらうスタイル。奥に厨房が見える。
“看板”ドーナツをオーダー。クリームがフレッシュで生地が軽く、甘さも絶妙で文句なし
サンドイッチの一番人気は、クロワッサン×エッグベネディクト。ハムや卵が旨い、ソースもできたての味でクロワッサンの甘さとぴたり。感動した