クラウン エステート RS(PHEV)

いよいよ新型クラウンのラインナップが完成

 2022年にこれまでのイメージや商品コンセプトをくつがえすように生まれ変わったトヨタの新型クラウンは、当初からクロスオーバー/セダン/スポーツ/エステートの4つのボディタイプが存在することを明らかにしていました。クロスオーバーを皮切りに順次発売されていき、今年になってついに最後まで未発売だったエステートがディーラーに並ぶようになりました。

ようやくしんがりのエステートが発売され、クラウンファミリーが出揃った。奇しくも今年はクラウンの生誕70周年でもある。ハイブリッドの“Z”が635万円、PHEVの“RS”が810万円(写真の一番右がエステートだが、これはプロトタイプモデル)

 本来のスケジュールよりもかなり遅れてしまった主な理由には、数年前の半導体部品の供給不足によりクロスオーバー/セダン/スポーツの納車に想定以上の時間がかかり、まずはそちらの停滞を解消する必要があったなどと言われています。

PHEVモデルのプロトタイプ

 個人的には、新型クラウンでもっとも評価するべき点は「クラウン」という車名を残したことだと思っています。実際、その名前以外に新型クラウンから従来のクラウンを想起させる部分はほとんどありません。知名度も商品力もかなり落ちていたクラウンだったので、商品の内容がここまで大きく変わるなら、いっそ名前も変えてしまう絶好のチャンスでもあったわけです。しかし、もし新しい名前を与えられていたら、トヨタにニューモデルがひとつ加わったというだけで、ここまでの注目は集まらなかったかもしれません。「クラウン」の車名を使い続けることで、「いままでと全然違う!」という強いインパクトを市場に与えることができて、大きなニュースとして何度も取り上げられるに至りました。そこまで計算しての名前の継承であるならば、誠に天晴れな戦略と言えます。

HEVモデルのプロトタイプ

スペック上の注目点は全高

 クラウン・エステートのボディサイズは全長が4930mm、全幅が1880mm、全高が1625mm、ホイールベースが2850mm。このうち、全長とホイールベースはクロスオーバーと、全幅はスポーツと同値です。燃料電池車であるセダンはMIRAIのプラットフォームを流用しているものの、その他3モデルはGA-Kと呼ばれるプラットフォームを併用しているので、ボディサイズのところどころで数値が同じなのはそういった理由もあります。ちなみにスポーツだけは、ハンドリングを向上させる目的でわざわざホイールベースを短くしています。

クラウンエステートのHEVシステム
およびPHEVシステム。いずれも「VVT-iE」「D-4S」を採用した2.5Lエンジンと組み合わせる。サスペンションはフロントがマクファーソンストラット、リアがマルチリンクで他のクラウンと同一だが、電子制御式ダンパーのAVSや後輪操舵機構のDRSにはエステート専用のセッティングが施されている

 エステートのボディサイスで注目すべきは全高です。一般的にエステート(あるいはワゴン)は、ベースとなるセダンやハッチバックとほとんど変わらない全高を有している場合が多いですが、クラウンのエステートの全高は4兄弟の中でもっとも高くなっています。

こちらのエステートもプロトタイプだが全高がもっとも高い

「SUVのメリットも踏まえた新しいタイプのワゴン」ということのようですが、過去にはセダンをベースにしたクラウンのエステートが存在していたので、その頃を知っている人にはちょっとした衝撃かもしれません。

ワゴンは荷室の使い勝手も大事な性能のひとつ。クラウン・エステートは、後席を倒すと前席後方まで2mに及ぶフラットフロアなスペースが現れる。荷室容量は通常時で570L、後席を倒すと1470Lまで拡がる
荷室には、バンパー上部に格納できる引き出し式の簡易チェアや、荷室脇に収納できるデッキテーブルが備わる。荷室を単なる荷物スペースだけでなく、レジャーを楽しむ空間としても活用できる