今回は、大河ドラマ『光る君へ』において、登場するたびに独特の存在感を発揮し、視聴者を釘付けにする、秋山竜次が演じる藤原実資を取り上げたい。

文=鷹橋 忍 

清水寺 写真=makoto.h/イメージマート

道長との関係は?

藤原実資(菊池容斎『前賢故実』より)

 藤原実資は天徳元年(957)に、藤原斉敏の四男として生まれた。

 康保3年(966)生まれの藤原道長より、9歳年上である。

 実資の祖父は藤原実頼といい、朱雀天皇の摂政と関白をつとめ、いわゆる「摂関政治」を確立した藤原忠平の長男である。

 なお、道長の祖父・藤原師輔(藤原忠平の二男)は、実資の祖父・実頼の異母弟であり、実資と道長の関係は「はとこ」にあたる。

 

90歳の長寿をまっとう

 実資の祖父・藤原実頼は、比叡山麓の「小野」の地に隠棲したことから「小野宮」と称された惟喬親王(文徳天皇の皇子)の邸宅であった「小野宮第」を本邸とした。

 そのため、実頼の一族は「小野宮流」と呼ばれる。

 実資は父・藤原斉敏が早世したため、祖父・実頼の養子となり、小野宮第をはじめとする莫大な財産を伝領した。

 実資は名門出身で有能、しかも人柄も優れているといわれ、坂東巳之助が演じる円融天皇、本郷奏多が演じる花山天皇、塩野瑛久が演じる一条天皇と三代の天皇に、蔵人頭として仕えている。

 参議、権中納言、大納言と進み、治安元年(1021)、65歳のとき、右府とも呼ばれる右大臣にまで出世し、以後、死去するまでその地位にあった。

 有職故実に精通し、「賢人右府」と称えられ、永承元年(1046)、数えで90歳という長寿をまっとうし、この世を去っている。