長年にわたって作られてきた定番品は、“当たり前”の良さを持っている。誰もが日常的に使えて、しかも品格あるスタイル作りの役に立つ。そして流行にとらわれず、末長く愛用できるところも魅力的。なかでも独自の哲学を込めつつ、素材や製法にもこだわりを尽くした真のマスターピースを紹介する。
写真/青木和也 スタイリング/荒木義樹(The VOICE) 文/長谷川剛 編集/名知正登
冬を快適に楽しむには高機能アウターが欠かせない
ダウンジャケットは防寒着として非常に優秀である。周知のとおり水鳥の羽毛を封入したスポーティなアウターであり、暖かいだけでなく軽量という利点を併せもつ。
保温効果だけでいえば、裏ボアを備えたムートンジャケットなども優れた断熱機能を備えている。しかしダウンほどの軽量性はなく長時間着用すると着疲れしてしまうことがある。保温性能に優れたアウターの利点として、その内側に着込むシャツやニット類が春先用の軽快なもので済むところは見逃せない。つまり街着を基本とするのであれば、本格的な秋冬用の厚手のニットやフリースなどをいくつも揃えておく必要はなくなるのだ。
そんな冬季ワードローブのスリム化にも役立つ軽量かつ機能的なダウンジャケット。選びの際に役立つポイントとして、ぜひ押さえておきたいワードがある。「フィルパワー」は使用される羽毛素材のかさ高性を示す単位であり、昨今のダウン製品の多くに表示されている。
これはたとえば600フィルパワーのダウンの場合、1オンスの重量の羽毛が、600立方インチの体積にふくらむことを意味する。ふくらみをもつ羽毛はそれだけ高い保温性を有するわけで、フィルパワーの数値が高いほど保温機能に優れたダウンだと言えるのだ。すべての製品に明示されてはいないものの、保温性能を重視するならぜひ知っておきたいポイントだ。
もちろん、保温性能だけがダウンジャケットのすべてではない。シェル(表地)の機能も同時に考慮すべきであるし、ファッションギアとしての使い勝手も見逃すべきではない。いずれにしてもアウトドア服の作り手として、一定の歴史をもつブランドのダウンジャケットは、総じて動きやすく悪天候にも耐える優れた機能を兼備する。そしてダウンのクオリティも平均以上のものを用いた優良品を継続的に打ち出している。
そこで今回は、お洒落にうるさいファッション・フリークが注目するアウトドアブランドのなかでも、優秀な機能と高感度なデザインを兼備した名品ダウンジャケットを紹介する。
1. WOOLRICH
高機能にして街着にも馴染みやすいシックなシェル使い
アメリカ政府に依頼され1972年にウールリッチが生み出した傑作ダウンジャケットである「アークティックパーカ」。マイナス40度の極地での作業アウターとして、高い保温性に加え使い勝手の良いポケット、寒風から頭部を守るリアルファー付きフードなど、機能的にもこだわったワークアウトドアな一着である。
2012年に復刻した現代版は、リリース直後から世界的な人気を博し、それまでスキーを中心とするスポーツブランドがリードしていたダウン市場を一転させたエポックなモデルでもあるのだ。
順次進化を続ける現代版のポイントはRDS(動物福祉に則った調達基準)認定のダウンを使用することと、「ラマー60/40」シェルの採用。「ラマー60/40」はナイロンの強さとコットンの快適さを兼備する定番的なハイテク素材だ。優れた撥水・耐摩耗性をもちつつ、定番ウエアとも馴染みやすいマットかつシックなタッチを備えている。