長年にわたって作られてきた定番品は、“当たり前”の良さを持っている。誰もが日常的に使えて、しかも品格あるスタイル作りの役に立つ。そして流行にとらわれず、末長く愛用できるところも魅力的。なかでも独自の哲学を込めつつ、素材や製法にもこだわりを尽くした真のマスターピースを紹介する。
写真/青木和也 スタイリング/荒木義樹(The VOICE) 文/長谷川剛 編集/名知正登
快活にして大人の品格も併せもつ
それなりに立場のある大人であれば、シャツは襟付きのものが好ましい。スポーティなTシャツスタイルも市民権を得てはいるが、社会人の基本となるシャツは、やはり襟付きであるべき。とは言え本式のドレスシャツでは少々堅苦しい。スポーティなカジュアルスタイルが全盛の昨今は、襟付きシャツと言えども、くつろいだ雰囲気のものが気分なのだ。そこで改めて注目したいボタンダウンシャツ。
その昔、ポロ競技の選手がプレー中の襟のバタつきを嫌い、ユニフォームの襟を身ごろに留めたことに由来するシャツだ。当時はそのままポロカラーシャツの名称であったが、時代とともにファッションアイテムへと転じ、いつからかボタンで襟を留める様からボタンダウンシャツ(BDシャツ)と呼ばれるようになったという。
ともあれ、スポーツ由来のこのシャツはカジュアルに着くずすのに適した一枚である。特にBDシャツの定番である綿のオックスフォード生地(タテ糸とヨコ糸を2本ずつ引き揃えた平織り生地)のものは、厚手ゆえに丈夫ながら通気性に優れることから、通年快適に着こなせることに加え、洗いざらしが表情豊かにキマる。
またネクタイを締めれば、軽妙でありつつドレッシーなルックスも作り出すことが可能だ。そして近年はフランネル生地やブロード生地のモデルなど種類を広げており、シーンによっていろいろな“BDスタイル”が楽しめる状況となっている。大人っぽく上品に、そして快活さや快適さを求めるなら、まずはBDシャツから始めてみてほしい。
1. ANATOMICA
今なお進化し続ける永遠の定番
アナトミカは1994年、フランス人オーナーによりパリに開店したセレクトショップを原点とするブランド。各種オリジナルアイテムを打ち出すなか、10年以上の定番品となるのがBDシャツである。糸から作るオックスフォード生地は1960年代のトラッド黄金期をほうふつさせる肉厚の別注素材だ。
生産は腕の良い国内工場にて縫い目の幅まで細かく指定し、両わきの巻き伏せ縫いなど美観と強度を備えた仕立てを実現。“解剖学”をブランド名とするだけあって、この定番シャツも万人にマッチさせるため、常に研究しミリ単位でアップデートを重ねている。まさに進化を止めない名品シャツなのである。