長年にわたって作られてきた定番品は、“当たり前”の良さを持っている。誰もが日常的に使えて、しかも品格あるスタイル作りの役に立つ。そして流行にとらわれず、末長く愛用できるところも魅力的。なかでも独自の哲学を込めつつ、素材や製法にもこだわりを尽くした真のマスターピースを紹介する。

写真/青木和也 スタイリング/荒木義樹(The VOICE) 文/長谷川剛 編集/名知正登

それ一枚でも装いが成立する“白無地”Tシャツの台頭

 極めて簡素なデザインであることから、それ一枚での装いは子供っぽい、もしくは物足りないと思う人も多いTシャツの着こなし。しかしメンズスタイルにおける伝説であるジェームス・ディーンや白州次郎は、爽やかなTシャツ姿の写真を残しファッションアイコンとなっている。

 特に白無地のTシャツは、清潔感から女性受けも悪くなく、しかも合わせるパンツを選ばない万能性も兼備する。さらにそれが素材やパターンの面で吟味された高級Tシャツであるなら、一層装いの完成度はアップする。まさに検討の余地ある魅力的なアイテムなのだ。

 昨今はカジュアル化の傾向が加速し、カットソーやTシャツなどの軽いアイテムを軸とする装いが幅広い層に定着しつつある。そんな状況を受け一部先進的なブランドでは、差別化を意図し、素材やデザインを吟味したプレミアムなTシャツをリリースし、広く話題となっているのだ。

 シルクに匹敵する希少でしなやかな厳選コットンを用いた一枚は、着心地もさることながら、定番的な無地ホワイトでも得も言われぬ優雅なツヤ感を漂わせる。さらにTシャツの王道であるコットンではなく、天然の速乾性や抗菌機能に優れたウール製Tシャツも登場し人気を博しているという。

 そこで今回は見た目にもリッチな存在感をもち、独自のカッティングおよび縫製により、美観や機能まで兼備した白無地Tシャツをピックアップ。それら特別なスペックのTシャツなら、単品の装いでも気後れせずに堂々とお出かけもOK。間違いなくお洒落の範疇と言えるアイテムなのである。

 

1. gicipi

Tシャツ¥4,950/ジチピ(フォーチュンチー ジャパン)

フィットも優しくフトコロにもソフトなイタリア製

 イタリアのなかでも名品に携わる工場の多い、北部パドヴァにおいて1948年に創業したジチピ。現在も70年前の古い編み機を稼働させ、昔ながらのスローな生産を続けるニットやカットソー専門のブランドだ。

 定番のTシャツである「アンノーネ」は、60番コットン双糸を用い、リブ編みの一種であるスコッツィア編みの素材がひとつのポイント。心地よいフィット感に加え、単糸にはない強度と型くずれしにくい特性を兼備する。さらに仕上げに光沢感を添えるシルケット加工を施しており、上品なツヤを持つ一枚のため、インナー使いはもちろんアウター使いにも適している。

 写真のモデルは身ごろの両わきに縫い目をもたないスムースな丸胴編み。フィットしていながら両サイドに縫い代がないため、非常に心地よく着続けられるのだ。イタリア製の念入り仕立てでありながら、リーズナブルであるのもうれしい。