長年にわたって作られてきた定番品は、“当たり前”の良さを持っている。誰もが日常的に使えて、しかも品格あるスタイル作りの役に立つ。そして流行にとらわれず、末長く愛用できるところも魅力的。なかでも独自の哲学を込めつつ、素材や製法にもこだわりを尽くした真のマスターピースを紹介する

写真/青木和也 スタイリング/荒木義樹(The VOICE) 文/長谷川剛 編集/名知正登

履きやすく合わせやすく品格まで兼ね備える

 トラッドな本格仕立ての革靴は、男を引き立てる絶好のアイテムだ。履くことでピシッと背筋が伸びるだけでなく、ここぞのスタイルをランクアップさせる非常に頼りになる存在なのだ。普段はもちろん気軽なスニーカーで良いだろう。しかし一張羅のスーツやジャケットを纏うシーンでは、本格仕立ての革靴を合わせるのが正統派男子のたしなみだ。

 しかし、本格仕立ての革靴といっても星の数ほど種類がある。ここではまず揃えるべき旬な一足を紹介する。それはいわゆる外羽根式のプレーントゥ。靴ひもを通すためのパーツを甲革(アッパー)の上に据えつけた形式であり、なおかつトゥ回りに装飾をもたないシンプルなルックスのモデルである。

 この外羽根式のプレーントゥは大きく2つのメリットをもつ。ひとつは極めてシンプルゆえに、あらゆる装いにマッチすること。今回あえて内羽根式に触れていないのは、昨今メンズスタイルがカジュアル化に流れており、フォーマル感の強い内羽根式は、少々かしこまり過ぎに見えるから。そして、羽根が比較的ワイドに開く外羽根式は、足がむくんだときなど靴ひもの調整にて窮屈さを緩和させることも可能。つまり、快適にしてファッションに合わせやすく、大人の品格を手軽に打ち出せるのである。今回はなかでも極めてトラッドな英国老舗の定番を中心に、世界の靴好きが支持する実力派ブランドの名品に絞ってピックアップ。

 

1. ALDEN

シューズ¥211,200/オールデン(ラコタ)

最高品質のコードバンは輝きからして段違い

 世界中の服好きから支持を得るアメリカン・シューズの殿堂、オールデン。英国的な伝統仕立てに加え、米国らしい実用本位の安定感ある佇まいを兼備し、クリーンすぎずヴィンテージ風の存在感を放つところが大きな魅力。

 また、この一足はオールデンの至宝であるコードバン・レザーの味わいを存分に楽しめるプレーントゥモデル。コードバンは馬の尻の革を丁寧になめした素材であり、貴重なうえに牛革とは異なる奥深い艶感が最大のポイント。なかでもオールデンではコードバンに関するトップ企業、米国ホーウィン社からトップグレードの素材を調達している。丁寧に磨きつつ履き続けることで、得も言われぬ輝きと起伏豊かなシワ感を手に入れることができるのだ。