文=松原孝臣 撮影=積紫乃

 今シーズンの最終戦となった3月下旬の世界フィギュアスケート選手権(カナダ・モントリオール)のペアで銀メダルを獲得。大会を終えて帰国してひとときが経った。

 シーズンを振り返る中でこう語った。

「学びが多かったシーズンだったと思います」

 木原龍一の言葉に、三浦璃来がうなずく。2人にとって、想定していた通りに進まなかった1年は、でもこれからへの貴重な時間でもあった。

 

思いがけない出だしとなったシーズン

 三浦璃来、木原龍一は日本ペアの歴史を塗り替えながら歩んできた。2022年の北京オリンピックでは団体戦で日本初のメダルとなる銀メダル獲得に大きな役割を果たし、個人戦では史上初の入賞となる7位。同シーズンの世界選手権で日本ペア最高の銀メダルを獲得すると、2022-2023シーズンはさらに飛躍を遂げる。

 世界選手権で日本ペア初の金メダルを獲得したのをはじめ出場した大会すべてで優勝。全種目を通じて日本初の年間グランドスラム(グランプリファイナル、四大陸選手権、世界選手権のすべてで優勝すること)を達成したのだ。成績ばかりではなく、日本においてペアの認知度を飛躍的に高めたことも特筆される。

 しかし、迎えた今シーズン(2023-2024シーズン)は、思いがけない出だしとなった。

 初戦となったオータムクラシックを2位で終えると、その後は大会の欠場をよぎなくされた。木原の腰椎分離症が発症したことによる。

 大会への復帰を果たしたのは2月の四大陸選手権。ここで2位となり、迎えたのが世界選手権だった。

 ショートプログラムは『Dare You to Move』。冒頭、高さのあるトリプルツイストリフトに大きな歓声が起こる。その後もつなぎやスロージャンプなどで惹きつけ、歓声の中でフィニッシュ。四大陸選手権からのたしかな足取りを思わせる演技に、2人は笑顔を見せる。四大陸選手権の65・61点を回る73・53点、2位でスタートを切った。

 フリーは北京オリンピックのあった2021-2022シーズンに使用していた『Woman』で臨む。

 スタート直前、いつにもまして三浦は緊張しているようだった。三浦は言う。

「前の選手がカナダのペア(ディアナ・ステラート、マキシム・デシャン組)ですごく声援が大きくて。その中でいい演技をされてものすごく会場が盛り上がっていての出番だったので、すごく緊張してしまったのかなと思います」

 しかも直前の6分間練習で、三浦は左肩を亜脱臼していた。

「(関節を)戻したんですけど、やっぱり不安定さが残っていたので、そこはすごく不安がありました」

 対して、木原は言う。

「もちろん不安だったんですけど、自分たちがしなければいけない準備はしっかりしてきたので絶対大丈夫という思いの方が強かったです。璃来ちゃんにも、『大丈夫だよ』と話していました」

 幸い、痛みは感じなかった。

「たぶんアドレナリンがあったので痛みは本当に感じなかったです。次の日ぐらいからだんだん痛みが出始めました」(三浦)