2年前の思いを晴らせたフリーの演技

2024年3月21日、世界選手権、ペアFSを演じる三浦璃来、木原龍一組 写真=共同通信フォト

 地元選手の好演技による高揚、アクシデント……。でも始まると、それを感じさせない演技を披露する。

 冒頭のトリプルツイストを決める。その後は2人ならではのスピード感あふれる演技を披露する。北京オリンピックシーズンからの成熟を感じさせるパフォーマンス、そして2人の笑顔が観ている人々を引き込んでいく。ショートプログラム同様、歓声と拍手の中、滑り終えた。

 ただ、終えた直後の三浦に笑顔はなかった。悔しさをかみしめるような表情に終始した。

「四大陸選手権が終わってから世界選手権まで6週間の間があったんですけど、ほんとうにいい練習をしていて、ノーミスがずっと続いていたぐらい調子がよかったんですよ。その中で、自分の弱さがフリープログラムで出てしまって自分のミスで点数が下がってしまったなって分かっていました」

 それでも得点は144・35、フリーでは1位。総合順位ではディアナ・ステラート、マキシム・デシャン組に次ぐ2位であったものの、今シーズンの過程を考えてみても見事なシーズンの締めくくりと言えた。場内に鳴り響く拍手と歓声も象徴的だった。

 大会から間を置いた今、三浦は語る。

「2年前のオリンピックの演技と同じような演技、それを超える演技がしたいと思って臨んでいました。少ない期間の中でも、オリンピックシーズンに積み上げてきたものがあったので私たちはすぐに思い出すこともできましたし、自分たちらしい滑りができるプログラムだったので、戻してよかったなと思います」

 木原はこう振り返る。

「時間が限られていたのでほんとうに集中して練習をしていましたし、自分たちがしなければいけない練習をしっかり積めたのが、いいフリーにつながったのかなと思います。2年前のフリーで最後はあのような終わり方をしてしまっていたので、やっぱりこのプログラムをあのような形で終わらせたくない、きれいな形で絶対終わらせたいなというプログラムに対する思いがありました」

 木原の言う2年前とは、2022年3月の世界選手権のこと。銀メダルを獲得したもののフリーはいくつかミスがあり、演技を終えたあとの2人は悔しさをのぞかせていた。

「もちろん完璧ではなかったんですけど、あのプログラムは僕たちが世界で戦っていく自信をさらにくれたプログラムで、大切にしているプログラムでもありました。完璧ではなかったけれど、よかったかな、と思います」(木原)

 いわば2年前の思いを晴らせたのが今回のフリーであった。

 それも1つの成果ではあったが、そこにとどまらない。

 世界選手権を終えて、シーズンを終えて、あらためてこの1年を振り返る中で、「学びが多かった」と木原は言う。三浦も同意するように小さくうなずいた。

 彼らが得たものとは何だったのか。(後編へ続く)