文=松原孝臣 撮影=積紫乃

高橋大輔プロデュースの「滑走屋」に出演

 2月上旬に出演したアイスショー「滑走屋」に触れたとき——。

「すっごい楽しかったです」

 青木祐奈の声がまた弾んだ。

「10月か11月あたりにお話をいただきました。アイスショーに出たい気持ちがすごく強かったので、中庭先生から電話をいただいたときは外にいたんですけど、そこで泣いて喜んでしまって」

 ショーをプロデュースした高橋大輔は「滑走屋」に出演してもらうスケーターを探して東日本選手権にも訪れていた。

「(高橋)大輔くんとは(2014年の)『クリスマス・オン・アイス』でご一緒させていただいて、そのあとはあまり会う機会がなかったんですけど、東日本選手権の試合が終わった直後、たまたまお会いして『すごい素敵だった』と言ってくださって。でも来ている理由は知らなかったです」

 年が明けて、準備が進められた。

「1月に大輔くんと(村元)哉中ちゃんが振付を作った動画を送ってくださって、それを見て、まずたくさん量があったので大丈夫かなと不安でした。それこそアイスショーに1回も出たことのないスケーターが多かったのでみんなも不安はあったんですけど、みんな予習をちゃんとしていて、リハーサルが始まるとこれはこうだよね、あれはこうだよねってお互いに助け合いながらできたと思います」

 今まで経験していない構成にも取り組んだ。

「振り付けの鈴木ゆまさんが作ってくださったフォーメーションの動画があって、それを見ながら1個1個丁寧に自分の配置を覚えるだけじゃなくて、周りとの間隔だったり、照明との調整だったり新鮮で、自分としては楽しかったです」

「たくさんの人数で作り上げていく作業をしたことがあまりなかったので、それで得られる達成感は大きかったなと思いますし、メインのスケーターとして呼んでいただいたのでみんなをサポートしていきたいなと思ってたんですけど、自分は全然そんな力がなかったので、(友野)一希くんとかがまとめているのを見て、しっかり引っ張っていく力っていうのが大事だなと思いました」

2024年2月9日、アイスショー「滑走屋」公開リハーサルでの青木祐奈 写真=YUTAKA/アフロスポーツ

 ときにアクシデントもありながら3日間計9公演を滑り切った。準備の時間を含め濃密かつ充実した時間を過ごしたことは次の言葉にもあふれていた。

「現実に全然戻れなくて(笑)。ずっと『滑走屋』の曲を聴いていて、暇さえあれば踊って、みたいな感じでずっと過ごしていて、オランダに出発しました」

 そしてオランダのチャレンジカップで会心の演技を披露し2位となった。

 実はオランダに出発する2日前に怪我をしていたという。

「夜の出発だったので、ちょっと練習してから行こうと思ったんですけど、でも痛くて。大丈夫かな、と思ったんですけど、『滑走屋』の楽しかった思い出がすごい力になって、そのパワーで乗り越えた感じです」

 チャレンジカップでは青木がこだわり続けた高難度のコンビネーションジャンプ、トリプルルッツ-トルプルループをショートプログラム、フリーのいずれでも成功させた。それもまた、これまでの歩みを象徴するかのようだった。